昨今、近視が増加傾向にあるという──。2019年8月に慶應義塾大学医学部眼科の研究チームが、都内の約1400人の小中学生を対象にした調査を実施。なんと小学生の76.5%、中学生の94.9%が近視という結果が出た。
また株式会社ジンズが2019年に行なった「成人の近視に対する危機意識調査」では、仕事による視力の影響を感じると回答した人は5割。そのうち8割近くの人が「PCでの作業が増えた」と答えている。
「『コロナ禍の休校で自宅にいる生活が増え近視が進行した』と駆け込んでくる子どもさんが増えました。成人もIT機器使用の増加と視力の低下を感じる人の増加に相関関係が見られます」(三井メディカルクリニック・三井石根院長)
この1年間で、視力に何らかの不調を感じる人は確実に増えているのだ。
アジア圏は特に近視が多く、さらに増えている
近視増加の傾向は、全世界的な動きとの見方がある。そもそも近視の割合が3割から5割程度だった欧米でも、徐々に増え続けているとの報告があり、2050年には世界の近視人口が47億5800万人にのぼるとする推計すらある。
これを受け、近年ではWHO(世界保健機関)をはじめ、各国で近視にまつわる研究に力を入れるようになり、さまざまなエビデンスが示されるようになった。
なかでも日本を含むアジア圏は近視人口が多い。シンガポールや台湾、香港などでは18歳になった時の近視の割合が8割を超え、中国では20歳代までの若年層の90%が近視であるとの報告がある。上述の通り、日本の中学生の約95%は近視という調査結果もある。また、世界的な高齢化を背景に、老眼の数も増え続けている。
取材・文/小野雅彦
※週刊ポスト2021年4月16・23日号