新型コロナウイルスの感染拡大から1年以上経過したが、北朝鮮では一向に沈静化に向かう兆しが見られない。医療体制も整っておらず、食糧不足も重なり、大使館関係者の国外脱出も報じられている。さらに、地方でも朝鮮人民軍兵士が中国に逃亡する事件が発生していることが明らかになった。
また、十分な予算が支給されないなかではあるものの、感染拡大を防げなかったとして、地方政府のトップが銃殺刑に処せられる事例が判明するなど、北朝鮮社会は混乱の渦中にあるようだ。
朝鮮人民軍当局者が米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」に語ったところによると、この3月初め、鴨緑江をはさむ中国との国境地帯を警備している朝鮮人民軍第25国境警備隊旅団の6人の兵士が機関銃や拳銃、手りゅう弾などの武器類を携帯したまま脱北していたことが、朝の点呼の結果、分かった。
6人は3月2日の夜に国境で夜間の張り込みの任務を命じられていたが、3日早朝に予定されていた帰隊の時間に旅団本部に現れなかったという。このため、捜査チームが派遣され、国境一帯を調査したが、見つからず、何らかの事故に巻き込まれた形跡もなかったことから、「6人は武器を持って川を渡り、中国に逃げたと判断された」と軍当局者は匿名を条件にRFAに明らかにした。
北朝鮮では昨年1月、中国における新型コロナウイルスの感染拡大からただちに、国境封鎖措置をとり、中国との国境地帯に多数の軍部隊を派遣。とくに、国境警備隊は連日の24時間出動体制という過酷なスケジュールにもかかわらず、わずかな食糧しか与えられず、空腹と過労に苦しんでいたという。
これらの過酷な軍務は国境警備隊だけでなく、通常の部隊も同じで、軍兵士は政府から十分な食糧や給料をもらっておらず、食料を得るために、軍服を着た兵士が農場で働いている姿を見ることも珍しくない状態だという。