放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、この春に去りゆくものへの思いをつづる。
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“長瀬ロス”である。
クドカン(宮藤官九郎)脚本『俺の家の話』。最終回、なにかが起きるとは思っていたが、まさか“スーパー世阿弥マシン”が大みそかの試合で死んでしまうとは。誰しもが父であり人間国宝である西田敏行が死ぬもんだとばかり思っていたら……、この3月で芸能の表舞台からは身をひく長瀬の姿とあのマスクマンの姿が重なり、胸にジーン。
西田と同世代の私でさえまたクドカンにやられて涙だ。『あまちゃん』にも『いだてん』にもやられた。私の唯一の自慢は『タイガー&ドラゴン』で長瀬と共演したくらいだ。
なんだって終わる季節だ。「散る桜 残る桜も散る桜」である。私のぜいたくな書斎の窓からは満開の靖国神社の桜と武道館の玉ネギが見え、右手に皇居、左手奥にスカイツリーが見える。東京のまん真ん中にいる。こんな時、なつかしい東京の人々の事を想い出す。
お彼岸だったので立川談志師匠の家へお線香を送ったら、留守電に可愛いノン君の声(談志夫人。通称ノン君)。「もう10年たつのよ。いつまでも覚えててくれてありがとうネ」忘れる訳がない。
“V6”も26年間の活動で解散だろ。てっきり柴田と高田も入れて“V9”を目指すもんだと思っていた。
横綱鶴竜も20年で引退表明。“東関部屋”も35年で閉鎖。高見山が愛くるしい顔で「2倍、2倍」ってやってたのに。たしか人気者、高見盛が継いでたんだけどな。
そうそう、特急「踊り子号」185系も40年走って終わり。『伊豆の踊子』なんてもう若い人は読まないのかなァ。
テレビ・ラジオもお別れの季節。話題になったのは『とくダネ!』22年の歴史に幕。司会の小倉氏が最後、百恵よろしくスタジオになにかをそっと置いていくという演出がありそうだと噂になったがその手はなかった。
ウラの『グッとラック!』は志らく司会で、たった1年半でバッドラック。「麒麟がくる」と噂されてたが案の定、吉本の麒麟の川島がMCに。誰も話題にしていないが私は気がついた。