新年度を機に家計を見直す人は多いだろうが、彼らはどうか。反社会的勢力であるヤクザの収支バランスは、一般社会とどのように違うのだろう。このたび『職業としてのヤクザ』(小学館新書)を上梓した暴力団取材のプロ2人、溝口敦氏(ジャーナリスト)と鈴木智彦氏(フリーライター)が詳らかにする。
溝口:ヤクザが普通のサラリーマンと決定的に違うのは、サラリーマンが会社から給料をもらうのに対して、ヤクザは組に月会費(上納金)を納めているんですよね。みかじめ料とか覚醒剤とかさまざまなシノギ(資金源獲得の手段)によって組員たちが稼いできたお金を親分への感謝として上納しているということ。
鈴木:一応それは、組の組織運営のための必要経費ってことになるわけですよね、そうしないと収入になってしまい、課税対象になってしまう。
溝口:ただ実態としては、月会費は、ほぼイコール組長の金と考えていい。
鈴木:そもそもは本当に必要経費だったんですよね。だけど、子分に金を持たすとろくなことをしない、そして稼げば稼ぐほど、暴力団は強くなるという名目で、どんどん金を集めていった。いわば、子分をシノギにしていったわけです。
溝口:山口組も三代目組長の田岡一雄の時代には、月会費は、わずか2000円だったそうです。それに比べると六代目山口組の直参(直系組長)が納める上納金は、正規で毎月100万円。そのほかに臨時徴収とか、組長の司忍のお誕生日とか、直参クラスになると上納金だけで年間3000万円くらいは必要になってくる。かつて司の収入は最盛期、年間6億~10億円と言われていましたから。
ヤクザも会社経営などの事業収入については納税していますが、先ほどのとおり上納金については税金を納めていない。だから山口組として、総収入がどれぐらいでそのうちどれだけ納税しているかは不明です。
鈴木:ヤクザは昔から懲役を“税金”と考えていました。普段、無税で稼いでいるから、時折、刑務所にぶち込まれるのは致し方ないというわけです。