菅義偉・首相とバイデン大統領は、案外気が合うかもしれない。日米首脳会談を10日後に控えた4月6日、ジョー・バイデン米大統領の次男、ハンター・バイデン氏(51)が自叙伝を上梓した。ハンター氏といえば、親の七光りでロシア、ウクライナ、中国を股にかけて怪しげなビジネスを続けてきたことを大統領選挙でトランプ陣営の標的にされた弁護士兼ロビイスト。不当ビジネス疑惑は、最終的には米司法当局の「証拠不十分」という判断でいったんは沈静化している。
そこに飛び出した告白本の新味は、ハンター氏がこれまで様々に噂されてきた私生活について赤裸々に語った点だ。ハンター氏は、学歴こそイェール法科大学院卒だが、神経膠芽腫で早世した兄のボウ氏(享年46)と比較されて苦しんできた。ボウ氏は名門ペンシルベニア大学を経てシラキュース法科大学院で法務博士号を取得した後、米陸軍に入隊。イラク戦争に従軍して「レジオン・オブ・メリット」(最高勲功賞)を授与された(退役時は陸軍少佐)。除隊後は弁護士事務所を開業していたが、後に政界に進出、デラウエア州司法長官を2期務めた。絵に描いたようなバイデン家のプリンスだった。
その輝かしい兄の活躍の陰で、ハンター氏は10代から薬物に手をつける非行少年だった。現ファーストレディである継母ジルさんの必死のリハビリ支援でなんとか更生したとされる。親の七光りで公職(全米鉄道旅客協会副理事長など)にも就いたが長続きせず、それからは海外進出する米合弁企業のコンサルタントやロビイストをしてきた。
しかし、40代になって再びコカイン常習者になり、銃器の不法購入(薬物常習者の銃購入は禁じられている)、義姉との不倫、隠し子騒動、離婚などスキャンダルのデパートのような人生に転落した。
素行の悪さが有名だったからこそ、ドナルド・トランプ前大統領が目をつけ、政敵・バイデン氏のアキレス腱である「ハンター・マター」を徹底攻撃したのである。執念深いトランプ氏は、ホワイトハウスを去った後も、ハンター氏とモスクワ前市長夫人との金銭授受疑惑をやり玉にあげている。
ハンター氏は、45歳の時に22年連れ添ったキャスリーン夫人と別居、翌年にボウ氏が他界するや、未亡人になった義姉ハリーさんと恋仲になり、関係は3年も続いた。2017年にキャスリーンさんと正式に離婚したが、今度は2019年に知り合った南アフリカ出身の女性映画監督のメリッサさんと恋に落ちたという艶福家である。しかもその間、義姉との関係が続いていた2018年に別の女性との間に子供をもうけ、1年間にわたる親権争い騒動まで起こしている。
そうしたプライベートの荒廃ぶりを告白本では堂々と書いているから驚きだ。
<夜、寝ようとしても眠れない。昼夜の区別がつかない。私には時計がなくなった。コカインがないと生きられなくなった。ひどい時には15分ごとに吸った>
<家族は何とか更生させようとしたが、ダメだった。メリッサが現れ、手を差し延べてくれるまですべてダメだった。一目ぼれだった。会って一週間後には結婚していた。彼女は兄貴と同じような目をしていた>