橋田壽賀子さんが急性リンパ腫のため3月4日に亡くなった。享年95。親友・泉ピン子さん(73才)に看取られ、自宅で息を引き取った橋田さんは、2017年、女性セブン誌上で在宅医療の名医・小笠原文雄さんと対談し、「最期は自宅で」と自らの最期について希望を明かしていた。『女性セブン』2017年11月30日・12月7日号より橋田さんと小笠原さんの対談を紹介する。
* * *
橋田:小笠原先生の『なんとめでたいご臨終』を読むと、病気で死にそうだったかたが退院し、自宅に戻って、それで元気になられて亡くなるというケースがたくさん出てきますよね。
小笠原:そうです。橋田さんはどこで死にたいですか?
橋田:もちろん自宅です。私は病院が嫌いなんです。この前も顔にけがして、「頭に血がたまってるから入院しなさい」と病院の先生に言われましたが、黙って逃げ帰りました。そうしたら翌日具合が悪くなって、救急車で逆戻り。入院患者扱いでやってくれましたが、そのくらい病院は嫌い(笑い)。
小笠原:住み慣れたわが家はやっぱりいいですよね。末期がんの患者さんが自宅に帰られると、みなさん、目に精気が戻ります。生きる希望が出てくるので、宣告された余命よりも長生きします。そしてコロッと亡くなる。ぼくはこれを「希望死・満足死・納得死」と呼んでいます。残された日々を死ぬために生きるのではなく、住み慣れた家に戻れて嬉しい、そんな生きる喜びや希望と暖かさの中で亡くなるからです。
橋田:先生の本を読んでいると、私も心底、最期まで家にいたいと思いました。家だと、私はひとり暮らしなのでほんとに自由ですからね。誰かの顔色をうかがうこともないし、申し訳ないなと思うこともない。何をしようが自由です。
小笠原:その自由が病院に入ると相当制限されますからね。例えばちょっと身体が痛いとき、自宅なら這い這いできますが、病院ではさせてもらえません。患者が夜中にベッドから落ちて死ぬと病院は訴えられますから、どうすると思います?
橋田:まさか、縛りつけるんですか。
小笠原:あまり大げさに言えませんが、まさかのことは日本でも結構行われています。
橋田:だから私は、知らないうちに病院に運ばれないよう、対策はしてます。家の中で倒れても、救急車は呼ばないで。半身不随になっても生きているのはイヤだから、とちゃんと周囲に伝えています。