悩んだ末に2021年の海外メジャー初戦となる「ANAインスピレーション」(4月1~4日・米カリフォルニア州ミッションヒルズCC)に参戦を決めた渋野日向子(22)だが、通算2オーバーの72位であえなく予選落ちした。
「渋野はもともと、今年最初のメジャー大会となるANAインスピレーションに出場するか躊躇していた。アメリカで試合に出たあとに日本ツアーに戻ろうとすると、帰国時に2週間の隔離が求められて出場機会が減ってしまう。東京五輪で日本代表になるためには世界ランキングを落とすわけにはいかないが、若手から猛追を受けているため、1試合でも多く出場できるスケジュールを模索していたのでしょう」(担当記者)
結局、渋野は世界ランキングで獲得ポイントの高い米ツアーを転戦することに決めたが、時間を少しでもロスしないために「全米女子オープン」(6月3~6日)と「全米女子プロ選手権」(6月24~27日)までの3か月間、LPGAアジアシリーズに参戦するなど、海外を拠点にすることにした。その初戦で予選落ちとなって、いきなりつまずいてしまった。
「帰国後2週間の自主隔離が緩和されれば国内大会への出場を考えるだろうが、現段階では、このまま3か月間の長期遠征になる可能性が高い」(前出・担当記者)
渋野はこのオフからスイングを改造中だが、その成果が出ていない。肩よりグリップが上がらないようにトップの位置を低くし、縦振りから横振りにスイングを変更しているが、弊害も大きそうだ。プロゴルファーの沼沢聖一氏はこう言う。
「左へのミスを防ぐ目的があるのでしょうが、クラブヘッドがシャロー、つまり寝た状態で入ってくることでスピン量は減ります。そのうえ前下がりやラフなどライの悪いところでは非常に打ちづらくなってしまうスイングです。硬いグリーンでボールがオーバーするのもスピン量が足りないため。アプローチにダフリのミスが多いのも、まだスイングが固まっていないことと、シャロースイングからくるものだと思います」
新しいスイングは、オフに何度か練習を共にした石川遼(29)のアドバイスがあったとされる。米男子ツアーでは主流になっているスイングだが、この経緯は異例だという。
「このオフ、渋野のスイングの基礎をつくってきた青木翔コーチと師弟関係を解消している。渋野としては次のステップに進む気持ちで取り組んだわけだが、通常、スイング改造は特定のコーチのもとで行なうもの。プロが自分で新しい発見をしたとしても、コーチと話し合い、コーチが理論的にしっかり応えるかたちで取り入れていくことが多い。今回の渋野のようなケースはあまり聞かない」(ゴルフクラブメーカープロ担当)
イメージ先行で改造していくと、スランプに陥るリスクがあると、前出の沼沢プロも指摘する。
「世界を舞台にするプロの場合、ひとりで戦うのは不可能な時代です。世界のトッププロは技術的なコーチや体調管理のトレーナーはもちろん、各種データを集め、メンタルやパッティングの専門コーチまでつける。シーズンを通してチームで行動しないと勝てないといわれています」