加齢による体の衰えは避けられないが、とりわけ失いたくないのが視力。しかし、最新の技術で視力を取り戻せる時代になってきている──。
近視の矯正に最もポピュラーな方法はメガネやコンタクトレンズの装用であることは言うまでもないが、煩わしい日々の手入れから解放され、災害などのいざという時のために手術をして、裸眼で見えるようにしておきたいと考える人も少なくない。
近視矯正の手術で一般的に知られているのはレーシックだ。角膜を削って光の屈折を調整する術式で、1990年代頃から広まった。世界では4000万眼以上の実績があり、日本でも200万人以上が受けている代表的な矯正手術である。
「レーシックを受ける患者はひと頃に爆発的に増えましたが、現在ではドライアイや夜間の見え方など、レーシックの弱点を克服した次世代の術式であるリレックススマイルや、フェイキックIOLを受ける人が増えつつあります」(北里大学医療衛生学部・神谷和孝教授)
レーシックやリレックススマイルは軽度~中等度の近視に推奨されるのに対し、強度近視や、角膜が薄くてレーシックを受けられない人にとって検討の対象となるのが、フェイキックIOLだ。タレントの指原莉乃が受けて若者の間で注目されるようになった治療で、目の中にレンズを移植する、いわば眼内コンタクトレンズといったものだ。
また、白内障治療では濁った水晶体を人工のレンズと置き換える手術が行なわれるが、白内障患者は高齢者が多く、老眼をともなっている場合が多い。この手術に遠近2焦点や遠中近3焦点のレンズを用いることで老眼を改善させることができる。2焦点レンズの中には保険適用となっているものもある。
「かつてはレンズの加工部分でコントラストが落ちることもありましたが、最近は光学設計の進化が著しく、高性能なレンズが増えました。メガネをかけずに生活したければ、多焦点レンズをおすすめします」(クイーンズアイクリニック・荒井宏幸院長)
近視治療としてレーシックを受け、その後加齢による老眼などの視力回復に多焦点眼内レンズを埋め込むことも可能だ。
取材・文/小野雅彦
※週刊ポスト2021年4月16・23日号