中国政府が新疆ウイグル自治区で100万人以上のウイグル族を弾圧している問題について、米、英、カナダなどEU(欧州連合)は制裁に踏み切り、オーストラリアとニュージーランドも制裁賛成の共同声明を出した。
しかし、日本政府はG7(主要7か国)の中で唯一、制裁に加わっていない。米国から制裁参加を要求されても菅政権が及び腰なのは、与党内に制裁に極めて慎重な二階俊博・自民党幹事長と公明党という頑強な親中国派勢力がいるからだ。
また、中国経済に依存する日本は、中国内での組織的な不買運動も恐れている。実際に、中国では新疆ウイグルでの人権問題を懸念する声明を出したスウェーデンの「H&M」や米国「ナイキ」製品への不買運動が広がり、SNSでは無関係の日本の衣料メーカーをターゲットにする動きまであるのだ。
五輪ボイコットがコワイ
拓殖大学日本文化研究所客員教授の宮崎正弘氏は、「次は五輪で、日本は中国と米国の双方から踏み絵を迫られる」と指摘する。
「欧米では人権問題で来年の北京冬季五輪のボイコットを求める動きがあるが、日本政府はそんなことを言えば中国が東京五輪に不参加となるかもしれないと恐れている。日本は欧米と中国の板挟みになってなんとか制裁をせずにやりすごそうとするでしょう。強い外交にはバックに軍事力と情報力が必要だが、日本にはどちらもない」
もし、日本が人権問題で制裁に加わるならば、それ以上の報復が待ち受けている。
「中国は日本企業の駐在員を拘束するといった逆制裁をやってくると思われる。過去にも関係がこじれた相手国の国民を拘束して自国の言い分を飲ませる人質外交を繰り返してきた。中国に進出した日本企業は無防備だから、かつて反日暴動で現地企業が襲われた。それと同じことが起きる懸念があるから日本政府は弱腰になる」(宮崎氏)