美術史家で明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜。日本美術応援団の2人が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・文京区の東洋文庫ミュージアムの第1回。2人が“世界一美しい本棚”に圧倒される。
壇蜜:うわぁ……(うっとりと見上げて)、なんて幻想的な空間なんでしょう。
山下:日本一美しい本棚とされる東洋文庫ミュージアムの常設展示「モリソン書庫」です。天井まで蔵書を展示するスタイルは米国のモルガン・ライブラリー・アンド・ミュージアムなどを参考にしているそうです。
壇蜜:中国やチベット、インドなど様々な国に関する本があります。あっ、背表紙に土偶を発見しました!
山下:縄文晩期の遮光器土偶で日本の先史時代に関する本ですね。書庫にある書籍は約2万4000冊。英新聞の海外特派員として北京に駐在したオーストラリア人のG・E・モリソンのコレクションで、東洋にまつわる質の高い資料が揃っています。
そのコレクションを購入して東洋文庫を設立したのが岩崎弥太郎の長男で三菱第3代社長の岩崎久弥。秀逸なコレクションが世に放出されると学者から聞き、その場で購入を快諾すると約70億円相当をポンと出資したそうです。
壇蜜:なんと豪快な! これだけのコレクションが散逸せずに済んだ学術的貢献は大きいですね。多言語ですが、モリソンさんはすべて読めたのでしょうか。
山下:彼が集めた古い時代の洋本は袋とじをたくさん重ねたような作りで未開封の書籍も多く残っています。
壇蜜:袋とじはグラビアの付録ではなく歴史ある製本文化だったとは……。開かれていない袋とじの中身に好奇心がそそられますね。
【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長。
壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)。
●東洋文庫ミュージアム
【開館時間】10時~17時(最終入館は閉館30分前まで)※開館状況はHPにて要確認
【休館日】火曜(祝日の場合は開館し、翌平日が休館)、年末年始、臨時休館あり
【入館料】一般900円
【住所】東京都文京区本駒込2-28-21
撮影/太田真三 取材・文/渡部美也
※週刊ポスト2021年4月16・23日号