持続可能な社会を目指して行動を起こすのは、環境意識が高い人たちの個人的な活動に限ったものではない。利益を追求する企業であっても、この世界で活動するメンバーとしてサステナビリティへの貢献は必須という時代になった。CO2排出量の削減が急務と言われるなか、鉄道会社が取り組む広範な試みについて、ライターの小川裕夫氏がレポートする。
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東京メトロが丸ノ内線の四ツ谷駅に設置した太陽光発電を3月26日から稼働させた。2008年、東京メトロは千代田線北綾瀬駅に太陽光発電のパネルを設置。それを皮切りに、東西線・日比谷線などにも太陽光発電のパネルを設置してきた。これらの太陽光発電で調達した電気は、駅のエレベーターや照明などに使われる。
再生可能エネルギーで電気を賄うことは昨今の社会情勢に鑑みても自然な流れだが、環境対策を講じたところで企業の売上増に直結するわけではない。鉄道事業者は公的使命が強く課せられていることもあり、収益とは関係なく環境対策に力を入れることが求められている。
「鉄道事業は車両・駅などで多くの電力を使用します。全世界的にCO2の削減が叫ばれる中で、少しでもCO2の排出量を抑制し、環境負荷を低減させることは鉄道会社にとっても重要であると認識しています。太陽光発電のパネルを設置することは、そうした取り組みの一環といえます」と話すのは東京メトロ広報部広報課の担当者だ。
いまや環境対策は官民を問わず、取り組まれている。売り上げに直結しない環境対策でも、民間企業がそれを怠れば投資家から見放される。環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮したESG投資を重視する社会的な風潮も強くなってきた。投資家から見放されてしまえば、資金調達のハードルは高くなり、企業経営は立ち行かなくなる。そうした背景が、企業に環境意識を芽生えさせている。
◆鉄道業界が取り組む環境対策
東京メトロは民間企業だが、株主は東京都と政府(財務省)の2者。純然たる民間企業のように株主の顔色を強く意識する必要はないように感じられるかもしれない。しかし、東京メトロは銀行からの融資や社債発行で資金を調達している。ESGを無視する経営はできない。
環境問題の高まりを受けてレジ袋やプラスチック製ストローの削減が打ち出された。また、各国で目標年数は異なるが、2050年にはガソリン車をすべて電気自動車(EV)などに置き換える目標を日本政府も打ち出している。
CO2削減・省エネルギーという観点からみれば、鉄道は輸送効率の観点からもエコといえる。なにより、鉄道業界が一丸となって鉄道車両をはじめとしてCO2削減や省エネに取り組んできた。
「東京メトロでは、前を走る列車がブレーキをかけることで発生させた電力を後続の列車が利用できる、回生ブレーキというシステムを導入しています。エネルギーを無駄なく使用することで、少しでも環境負荷の低減を目指しています」(同)