このところ数ヶ月おきに報じられている、コンビニのセルフコーヒーで、支払った金額よりも大きいサイズの分量を注ぐ事件。公務員だったため懲戒処分を受けたり、逮捕されたりする事例だが、実際にはニュースにはなっていない同様の事件が各地のコンビニで発生しているらしい。俳人で著作家の日野百草氏が、「みみっちい」客や万引きにメンタルを削られると嘆くコンビニオーナーの胸のうちを聞いた。
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「小さいサイズで買って大きいサイズ入れるとか、そういう客見ると、メンタルやられるんだよね」
東京下町、古くからのコンビニオーナー、久保田直雄さん(60代・仮名)に話を伺うことができた。思ったより広いバックヤード、商品のダンボールに囲まれた折りたたみテーブルに案内される。
「数十円の損でも損だからね、でもそれ以上に、なんかうんざりするんだよ、みみっちいというか、情けないというか」
オーナーと同年代、筆者がお世話になっている方からの紹介。当初は取材のつもりはなかったが、久保田さんの愚痴は興味深い。すっかり定着したコンビニのセルフ式コーヒーマシン、あの小のカップに大の量を入れる猛者がいるというのか。
「いるよ。だって入っちゃうもん」
なるほど、余裕はないが入れられないことはないらしい。もちろんサイズが一緒なら他の高い飲み物も余裕で入れられる。当たり前だが「犯罪」である。罪状は強いてあげれば窃盗罪、あるいは詐欺罪だろうか。
「そうなんだけど、犯罪って言ってもね、間違ったと言われればそれまでだし、わかんなかったとかね。わざとらしくてうんざりだ」
コンビニ大手3社の基本コーヒーサイズはセブンイレブンがR(レギュラー)とL(ラージ)で、ファミリーマートとローソンがS(スモール)とM(ミディアム)となっているが、本稿ではそれぞれ大と小とする。
「でも、コーヒーの量増やしただけで警察なんて呼んだことないね」
確かに、警察も通報されれば動くし事情は聞くかもしれないが故意かどうかはわからない。まして罪は罪でもあまりに微罪、起訴されるとも思えない。
「レジからは一応わかるんだけどね、忙しいとか、面倒だから声掛けしないこともあるよ」
それほどに久保田さん曰く「みみっちい」数十円の話、いったいどんな連中なのか。
「俺が知る限りこれまで3人くらいかな、そんなに多いわけじゃない。ぜんぶ男だね。それも40代とか50代のサラリーマン、ちゃんとスーツ着てるような連中だ。コーヒーに限らず、スーツ着たサラリーマンの態度が一番悪い。ストレス溜まってんだろうね。あとコンビニの店員を見下してる。長くやってるとわかるんだよ」