新型コロナウイルスの感染拡大は、いまなお収束しないままだが、緊急事態宣言が解除されたこともあり、街には再び人が溢れるようになった。しかし、意識や生き方は、間違いなく“コロナ前”から変化している。これまで当たり前だった生活が180度変化したことによる気づきや、コロナ禍で加速した分断、先行きの見えない閉塞感──。『自分をまるごと愛する7つのルール』(小学館新書)を刊行したばかりの下重暁子さん(84才)とジェンダー研究や介護研究のパイオニアである上野千鶴子さん(72才)が、コロナ禍における大切な生き方、そして死に方について、語り合った。
文字通り「おひとりさま」を貫く上野さんと、共に暮らすパートナーはいても「独立採算制でおひとりさま」として生きる下重さん。自分自身を心底理解し、大切にできるのは自分しかいない、頼れるものは自分だけという強い自負がある。
上野:お子さんを持とうと思ったことはありますか?
下重:子供がほしいと思ったことはないですよ。だって、自分とどこか似ている、同じDNAを持った存在がもう1人いるなんて許せないから。そう思いません?
上野:私は“許せない”なんて恐ろしいことは言えませんが、子供を持つことに“耐えられない”と表現した方がよいかもしれません(笑い)。
下重:私も「耐えられない」に修正するわ(笑い)。もちろん、自分のことは嫌いじゃない。今回、新しく出る本のタイトルも「自分をまるごと愛する」となっていますしね。でも、自分と同じ人間が存在することが耐えられないんです。
上野:考え方は似ていると思います。私は母親との関係がよくなかったから、母にとって苛烈な批判者である娘という自分の存在がどれほど嫌なものだったかがよくわかります。母のアキレス腱をいちばんよくわかっているのは娘だからこそ、無遠慮に批判する。自分が母の立場になって自分のような娘が目の前にいると想像するだけで耐えられませんね。
下重:私は中学生のとき、母を目の前にして説教したことがあるんです。養ってもらっている立場でありながら母に向かって「あなたの生き方は間違っている。同じような生き方はしない」って偉そうなことを言いました。
上野:実際に面と向かって言ったんですか!? 私は思っていたけど直接言えませんでした。そのときお母さまはどういう反応を?