貧打の巨人を“近々未来の大砲”が救う──。3月にヤクルトから移籍してきた廣岡大志(24)が4月13日の中日戦で、昨年の沢村賞投手である大野雄大から値千金の勝ち越しソロを放ち、巨人は2対1で接戦を制した。試合後、原辰徳監督は「非常に近々未来、必ず主力選手になってくれると思っている」と称賛した。プロ野球担当記者が語る。
「原監督はよく“近未来”という言葉を使います。それよりも、さらに近い未来という意味で“近々未来”を使ったのでしょう。少しややこしいですが、それほど廣岡を買っている証拠です」(以下同)
巨人は過去に2度の2桁勝利を記録し、昨年も先発や中継ぎで奮闘した田口麗斗(25)を放出してまで廣岡を獲得。セ・リーグ在京球団である巨人とヤクルトの交換トレードは、倉田誠と浅野啓司以来44年ぶりだった。
「巨人の補強といえば、FAで他球団のレギュラー、FA導入以前ならトレードで主力を引っ張ってきました。すぐにスタメンで使える選手やベテランの獲得が思い浮かびますが、若手をトレードで獲得することもあります。近年だと石川慎吾や立岡宗一郎、古くは鴻野淳基が貴重な戦力となっています。ただ、トレード移籍の若手がクリーンナップを打つケースはほとんど見受けられません。そのくらいの逸材は通常、他球団が手放さないですからね」
廣岡は2019年に10本塁打を放っており、智辯学園高校の1年先輩である岡本和真と肩を並べるような成長が期待されている。ヤクルト時代は三塁や遊撃を守っていたが、巨人では二塁や一塁でもスタメン出場している。選手層の厚い球団で、レギュラーを獲れるのか。
「20代前半で巨人に移籍し、その後クリーンナップを打った選手といえば、毒蝮三太夫に似ていることから“マムシ”と呼ばれた柳田真宏(俊郎)が思い出されます。高卒3年目にベテランの田中久寿男との交換トレードで西鉄から加入。移籍1、2年目はほとんど2軍暮らしでした。
当時の巨人はV9の真っ最中で、柳田がやってきた1969年はV5を達成し、戦力が特に充実していた。柳田の守る外野は柴田勲、高田繁、国松彰、末次利光と競争が激しく、入り込む余地がなかった。当時はレギュラーが1試合出ずっぱりの“9人野球”が主流でしたし、今のように主力をたまに休養させる発想もなかった。若手がチャンスを掴むには、相当厳しい環境でした」