4月クールの連続ドラマが続々と始まっているが、鈴木亮平と吉岡里帆の共演で話題を集めているのが『レンアイ漫画家』(フジテレビ系)だ。漫画家がメインキャラクターで登場するドラマはこれまでもあったが、今作のような“漫画家ドラマ”の強みはどこにあるのか? コラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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そんなわけでわちゃわちゃと始まった『レンアイ漫画家』。大ヒット恋愛マンガ『銀河天使』の作者で顔出しNGの天才漫画家・刈部まりあこと、刈部清一郎(鈴木亮平)は、令和のリアルな恋愛が描けず、困った末に失業した久遠あいこ(吉岡里帆)に報酬を払うから恋愛しろと命令。あいこは編集者の向後(片岡愛之助)が目を付けた丸の内の独身エリート早瀬(竜星涼)に接近することに成功し、デートにこぎつける。彼女の報告を聞いた刈部は、一気にネームを描きあげる。
とにかく一話からテンポが速い。そのスタートダッシュパワーの源は、「主人公が漫画家である」ことだ。ドラマなどで描かれる漫画家といえば、締め切りに追われてげっそりしているとか、売れっ子は巨大な屋敷に住んでいるとか、ライバル漫画家と仲が悪いなど、固定イメージがある。どんなに変わり者として出てきても、「漫画家だから」と視聴者が納得しやすい。どうして変人なのか、いちいち説明しないで本題突入できるキャラクターなのだ。
さらには先生から原稿をもらうため、担当編集者が走り回るのも当たり前。このドラマでも、向後は疑似恋愛を断ったあいこの自宅にまでやってきて勧誘し、狙う早瀬と話が合うように、彼の趣味であるラグビーの知識をあいこに必死に叩き込む。斬新なマンガのためだと言われれば、ありえないようなことでもなんとなく「アリ」になるのが、漫画家ドラマの強みだ。
思えば私たちは、古くは若き日の藤子不二雄を描いた『まんが道』、近年では個性的な漫画家がいろいろ出てきた『重版出来』や『アオイホノオ』などで、漫画家ドラマをいろいろと見てきた。荒木飛呂彦原作の『岸辺露伴は動かない』に至っては、奇怪な事件にでくわした漫画家・露伴(高橋一生)がリボンやフリルいっぱいのロリータ系ファッションの編集者(飯豊まりえ)と奇怪な事件を追いかける中で、「相手を『本』にしてその過去や秘密を知る」という特殊能力(顔がパッカリ割れてページがペラペラめくれるんですよ!)まで見せる摩訶不思議な場面も目撃してきたのだ。漫画家が出てくれば、もはや視聴者はたいていのことには驚かない。そこで『レンアイ漫画家』がどこまで、新鮮味を出してくるのか?