臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、男子ゴルフの海外メジャー大会、マスターズ・トーナメントで優勝を果たした松山秀樹選手について。
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今週は、松山秀樹の日本男子初となる、マスターズ・トーナメント優勝のニュースから始まった。米ジョージア州オーガスタ・ナショナルGCで4月11日、松山選手は通算10アンダーでマスターズ制覇という快挙を成し遂げた。
松山選手のマスターズ出場は10回目。海外メジャー大会での優勝は、本人だけでなく日本男子ゴルフ界にとっても悲願が達成された瞬間だった。朝日新聞デジタルはこの快挙を、「歴史の扉こじ開けた松山」と報じ、松山選手がウイニングパットを沈めた瞬間、生放送していたTBSでは、実況していた小笠原亘アナウンサーや解説していた中嶋常幸プロ、宮里優作プロが感動のあまり涙し55秒に渡って流れた沈黙は、“放送事故”と呼ばれた。
日本時間の深夜、松山選手が4打差でリードし日本人単独トップで、始まった最終ラウンドは、「マスターズは簡単には勝てない」と言われているように目が離せない展開が続いた。寝不足覚悟で見始めたものの、試合が進むにつれ寝るどころではなくなり、松山選手が映し出されると画面に全集中した。
緊張した面持ちで打った1番ホールの1打目は、大きく右にそれた。このホールはボギー発進だったが、サンデーバックナイン(後半9ホール)に入った時は2位に5打差と差を広げていた。このまま優勝までいけるかと思ったが、15番ホールでは2打目が池ポチャ。優勝後のインタビューでは、「ここでバーディーを取れば、引き離せると思っていたが、裏目に出ましたね」と語っている。下手の横好きでゴルフをやる人なら分かるだろうが、「あぁ池だ、嫌だなぁ…」と思っていると、なぜかボールが池へと吸い込まれていくあの“不思議”が蘇る。身体が無意識のうちに苦手意識や緊張感に反応してしまう。ミスショットを見る度に彼の緊張感が伝わってくるようだった。
17番ホールのバーディパットはショートするも、松山選手の顔に浮かんだのは苦笑い。試合後、「1番から最終ホールまでずっと緊張しっぱなしだった」とインタビューで話したが、この4日間を通した松山選手の表情は明るく、いつもより笑顔が多かった。以前のような淡々とした表情や、険しく怖い顔をしたり、怒りを目に見える形で表すこともなく、今回の濃い緑色が美しいオーガスタのコースでは、これまで見たこともないほど多彩な微笑みや笑顔を見せていたのだ。