個人の快挙であると同時に、“チームの勝利”でもあった。4月11日(現地時間)まで開催された米ゴルフツアー「マスターズ」で優勝した松山英樹(29)だ。日本男子初の海外メジャー制覇となる。
「悲願のマスターズ制覇は、“チーム松山”の勝利でした。明徳義塾中・高、東北福祉大の2年後輩で“コースへの一礼”が話題となった早藤将太キャディだけでなく、トレーナーや通訳、そして今年から契約を結んだ目沢秀憲コーチらが一丸となって栄冠を掴んだ。特に目沢コーチの存在は大きかったといいます」(ゴルフ誌記者)
松山は2013年のプロデビュー以来、専属コーチをつけてこなかった。米ツアーでは2014年に初優勝を飾り、2017年には5勝目を挙げたが、以降は優勝から遠ざかっていた。
「成績の伸び悩むプロゴルファーが、専属コーチをつけて迷いが消えることはよくある。とくに世界で戦うプロの場合、複数の観点からの分析とサポートは必須で、ひとりで戦うのは不可能。松山の勝利は改めてそのことを証明した」(プロゴルファーの沼沢聖一氏)
現代のトッププロにとって、コーチは“15本目のクラブ”というわけだが、松山が契約を結んだ目沢コーチは、30歳にして米国レッスンライセンス「TPI」レベル3の資格を持つ。これまでは女子プロをコーチすることが多く、2017年から指導する河本結(22)の米ツアー参戦をサポートする。
松山の恩師である東北福祉大ゴルフ部監督の阿部靖彦氏はこういう。
「英樹は自らの感性を大切にしながらゴルフを探求していく選手ですが、いろんな人の話を聞き、“一度コーチから学びたい”と言うようになった。昨年11月に仙台に帰ってきた時、英樹から“監督、目沢さんと会ってもらえませんか”と相談されたんです。私も直接会って話を聞き、1月から契約を結ぶことになった」
2人は昨年11月に米国で出会ったといい、「ゴルフ理論が噛み合ったことで、一気に契約の話が進んだ」(担当記者)という。映像分析やスイングの数値データ収集を重視するコーチングで、会場のドライビングレンジや練習グリーンには、機材を持ち込んでチェックを重ねる2人の姿があった。阿部氏が続ける。
「英樹はゴルフに関しては非常に細かくて、気になったことをひとつひとつ解決しながら進んでいく。その際に、目沢コーチの収集したデータや知識が役立つのでしょう。自分が納得したものだけを取り入れるのが英樹のスタイルですが、客観的に外から見てもらうことが、いい方向にはたらいているのだと思います」