クラシックはどの馬にとっても一生に一度の舞台だ。であるがゆえに、臨戦過程が重要だとされる。競馬ライターの東田和美氏が分析した。
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桜花賞にはノーザンファーム生産馬が11頭も出走、実に7着までを独占したが、特筆すべきは6着馬までがトライアルを使っていなかったこと。2012年から2017年までの桜花賞馬はいずれもトライアルを経てきたが、ここ3年は別路線からの出走だ。
皐月賞では2001年からの10年間はすべて3月のトライアルが前走だった馬が勝っていたが、直近10年では2月の共同通信杯経由が4頭でトップ。スプリングS組が3頭、さらにここ2年は昨年暮れのGⅠホープフルS勝ちからの直行だ。
かつて王道路線と言われた弥生賞からは2010年のヴィクトワールピサ以来、勝ち馬が出ていない。ダービーまで狙う関西馬にしてみれば、弥生賞やスプリングSを使うと、3か月の間に3度遠征しなくてはならないわけで、3歳春の若馬にとって楽なことではないのだろう。本番までの間隔がやや中途半端といった面もあるのかもしれない。
今年は最終登録馬すべての出走が可能。2頭の回避馬も出たため、1勝馬でも登録しておけば出走することができた。
例年なら新馬(未勝利)と1勝クラスを勝っただけの収得賞金900万円の馬は抽選での出走になることが多く、初勝利の後、重賞1、2着かオープンを勝つことが、とりあえずの「出走権獲得」の条件だった。それでもまだ賞金的に届かない場合もあったが、一応の目安にはなっていたものだ。
「最後のトライアルでバタバタしながら権利を獲っているようでは、本番を勝つことは難しい」とは藤沢和雄調教師の金言(『GⅠの勝ち方』/小学館刊)。早めにクラシックの権利を取って、余裕を持って本番を目指してきた馬が有利だということだ。
過去30年まで遡っても、トライアルでやっと出走権を獲得して本番も勝ったという馬は2004年のダイワメジャーと2018年のエポカドーロだけ。ほかに“東上最終便”毎日杯を勝って本番も制したのが1999年のテイエムオペラオーと2017年のアルアイン、2勝馬で7分の2の抽選をくぐり抜けて皐月賞馬になったのが2002年のノーリーズン。それ以外の勝ち馬25頭は、早い時期にクラシック出走のメドを立てている。
2、3着馬でもこの傾向は同じで、ここ10年の2着馬は8頭、3着馬は6頭がトライアルを使っているが、そのうち12頭は、それ以前に重賞連対かオープン勝ちがあり。馬の状態を見ながら余裕を持って本番に向かっていた。トライアルを使ったのは「念のため」だったり、「本番前のひと叩き」といった意味合いもあり、ギリギリまで仕上げてはいなかったはずだ。
今年の出走馬を見ると、トライアルからの参戦馬6頭のうち4頭は、すでに重賞連対やオープン勝ちがあり、一応「出走権」を持っていたと言える。
なかでもヴィクティファルスは共同通信杯で2着。長くいい脚を使ったエフフォーリアからはやや離されたものの、新馬戦を勝った次のレースとしては上々。まだ幼さが目立ち、持続性に疑問が残るという状態での好走は、さらなる伸びしろを十分に感じさせた。
クラシック出走を確実にするために出走したスプリングSでは余裕を残して完勝。今年に入って3度目の輸送となるが、重馬場もこなしており、瞬発力勝負の中山向きでここが勝負どころ。