最初の緊急事態宣言(2020年4月)から1年あまり。新型コロナウイルスは収束するどころか、いまや“第4波”が本格化しつつある。このパンデックはどうなるのか、過去の疫病から学ぶことも多い。
過去にまん延した世界的疫病といえば、人類史上最大の感染症と言われた「スペインかぜ」が知られている。いまから約100年前(1918年)に世界中で流行したスペインかぜには当時の世界人口の3割近くに相当する約5億人が感染し、死者数は4000万人といわれている。
このスペインかぜと同様、過去にパンデミックを引き起こした感染症は「インフルエンザ」が多い。1957~58年に流行した「アジアかぜ」もスペインかぜと同じ「A型インフルエンザ」の亜型だ。
1957年2月下旬に中国の一部地域で発生し、3月には中国全土に広がった。5月には日本に感染が拡大。その後WHOはパンデミックを宣言した。
日本では5月に第1波の流行後、夏には感染者・死者ともに減ったが、秋を迎えた10月以降に第2波を迎えた。
ワクチンは1957年8月に米国で、11月には日本でも使用可能になった。東京慈恵会医科大学教授の浦島充佳医師(予防医学)がいう。
「この頃からインフルエンザワクチンが実用化された。日本でもワクチンが普及し始めた1958年の春先には流行が下火となり、1年足らずで感染は収まった」
厚労省の「人口動態統計」によるインフルエンザの死亡者数の推移によれば、アジアかぜが流行した1957年は7735人と大幅に増加したが翌年には1975人に減少。しかしその後も毎年死者は出ている。
「インフルエンザのウイルスに本当の意味での“収束”はありません。ワクチンや治療薬ができてパンデミックが収まっても、流行病として定着し、常に一定の感染者は出るのです」(浦島医師)
約10年後の1968年にはまた小さな波が訪れる。これは「香港かぜ」と呼ばれた新型のA型インフルエンザの影響だ。
「香港かぜは発生段階でワクチンが製造できました。それが影響したのか、日本で大きな流行は見られなかった」(浦島医師)