4月クールの連続ドラマが次々とスタート。最近のドラマにはお笑い芸人が役者として出演するケースが増えているが、特徴的なのがTBSだ。人力舎に所属する芸人を相次いで起用しているのだ。その理由とは?コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
* * *
16日夜、北川景子さんの出産後連ドラ復帰作となる『リコカツ』(TBS系)がスタートしました。さらに、放送直後に配信されたスピンオフドラマ『リコハイ!!』(Paravi)で注目を集めているのは、東京03の豊本明長さん。
豊本明長さんと聞いて「あっ、また人力舎の芸人がドラマに出るのか」と思った人は、なかなかの芸能通。近年、東京03が所属する芸能事務所・プロダクション人力舎の芸人たちが次々にドラマ出演し、なかでもTBSは狙い撃ちするようにオファーを出し続けているのです。
ここ3年あまりの出演作だけをピックアップしても、アンジャッシュの児嶋一哉さんは2020年の『半沢直樹』。北陽の伊藤さおりさんは2018年の『義母と娘のブルース』と2019年の『グッドワイフ』。ドランクドラゴンの鈴木拓さんは2019年の『グッドワイフ』と2020年の『恋はつづくよどこまでも』、塚地武雅さんは2018年の『99.9 -刑事専門弁護士-』と2019年の『グランメゾン東京』。
おぎやはぎの小木博明さんは2019年の『G線上のあなたと私』、矢作兼さんは2020年の『恋する母たち』。東京03の飯塚悟志さんは2020年の『この恋あたためますか』、角田晃広さんは2020年の『半沢直樹』。今野浩喜さんは2018年の『ブラックペアン』『下町ロケット』と2020年の『テセウスの船』。ラバーガールの飛永翼さんは2019年の『ノーサイド・ゲーム』に出演しました。
これらの中には1話のみのゲスト出演だけでなく、主要キャストとしてのレギュラー出演も多く、近年その傾向が加速しています。しかも演技力に優れた特定の個人に集中しているのではなく、東京03のようにメンバー全員がオファーを受けているケースもあるのが凄いところ。なぜTBSは、まるでプロダクション人力舎という事務所を指名買いするように所属芸人たちへのオファーを続けているのでしょうか。
伝統的にコント巧者がそろう事務所
人力舎と言えば、かつてシティーボーイズ、竹中直人さん、B21スペシャルらが所属していたことで知られ、現在の所属芸人に至るまで、伝統的にコント巧者の多さが事務所のカラーになっています。
実際、自由な発想で作り込まれたコントで、東京03とキングオブコメディが『キングオブコント』(TBS系)の王者になりましたが、ネタのベースとなっているのが芸人たちの演技力。強烈な個性を放ちながら、どこかリアリティを感じさせられる人力舎芸人たちの演技力はテレビ業界でも評判がよく、ドラマ出演に最適な存在なのです。
次にドラマ制作の事情を挙げると、昨今の連ドラはシリアス一辺倒の作風では「暗い気持ちになる」と敬遠される傾向があり、その対策として息抜きとなるようなコメディパートを挿入することが定番になりました。人力舎の芸人たちは、そのコメディパートに脱力したムードと笑いをもたらす貴重な存在。経験豊富な俳優たちの中に入っても演技力の面で不安はなく、ストーリーのアクセントになれるのです。
また、人力舎の芸人はバラエティに出演する際、吉本興業、ワタナベエンターテインメント、太田プロダクションなど他事務所の芸人と比べると、「前へ前へ」と出たり、大声を張ったりするようなアクの強さを武器にしていません。そのため、「ドラマの役柄を演じるときに先入観なく見てもらいやすい」というメリットがあります。