「第6の味覚」と呼ばれる「脂肪味」。脂質過剰となっている現代人は、「脂肪味」に鈍感になっているという。「おいしいから」「体にいいから」と食べ続けている油が、不調の原因かもしれない──。
昨今の糖質制限ダイエットの影響もあり、炭水化物の摂取量が減る一方、「脂質(脂肪)」の摂取量は上昇し続けている。農林水産省の報告によれば、成人女性の40%以上が脂質を過剰摂取しているという。
脂質は3大栄養素の1つであり、健康に生きていくために必要不可欠だ。青魚に豊富な栄養素である「DHA」や「EPA」などのサプリメントを服用している人もいるかもしれないが、これらは「オメガ3系」といわれる脂肪酸に属し、血液をサラサラにする効果が期待できるといわれている。
しかし、ひと口に「脂質」といっても、「質」を間違えると逆効果となる。まず、脂肪とは「油脂」のことであり、常温で液体のものを「油」、固形のものを「脂」と示すが、大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2つに分類される。飽和脂肪酸は動物由来の脂肪に豊富で、牛や豚の肉や卵、乳製品にも多く含まれる。不飽和脂肪酸は、さらに細かく分類され、植物油や魚油に多く含まれる「多価不飽和脂肪酸」、オリーブオイルなどに含まれる「一価不飽和脂肪酸」などがある。
マーガリンのイメージが強い「トランス脂肪酸」は不飽和脂肪酸の一種だ。悪玉コレステロールを増やし、動脈硬化の原因となることが世界的に指摘されたため、マーガリンの摂取を避けている人もいるかもしれない。管理栄養士の望月理恵子さんが解説する。
「昨今のマーガリンの多くは、企業努力によって、トランス脂肪酸は1%前後という低い割合しか含まれていません。マーガリンよりバターの方が健康的と思っている人もいますが、バターにもトランス脂肪酸は同程度か、それ以上に含まれています。むしろ、毎朝のトーストにバターをたっぷり塗っている人は、飽和脂肪酸の摂りすぎが心配です」
飽和脂肪酸の過剰摂取は、コレステロールや中性脂肪の値が上昇する「脂質異常症」になるリスクがある。脂質異常の状態が長期間続くと血管に負担をかけ、動脈硬化を招く。厚生労働省の調査によると、国内の脂質異常症の総患者数220万5000人のうち女性は156万5000人。閉経後の女性ホルモン減少による影響が大きいとされる。
こうした情報から、マーガリンや動物性脂質を「悪い油」と捉え、一方、植物油やオリーブオイルは「いい油」と思いがちだが、果たしてそうだろうか。