ちょうど1年前、大阪の吉村洋文・知事は「コロナのスター」だった。連日、記者会見を開き、政府に先駆けて対策に奔走した。その孤軍奮闘ぶりに「#吉村寝ろ」がトレンドワードになり、「吉村総理待望論」まで持ち上がった。あれから1年、その名声は地に墜ちたと言っていい。大阪では一定の人気を保っているが、全国的に見れば、首都圏に先行して緊急事態宣言を解除したことで変異株蔓延の震源地になり、その変異株が全国に広がってしまったことで第4波を加速させた。
吉村氏の言動は徹頭徹尾、テレビ的だ。視聴者が喜ぶ政府批判や目新しい施策を次々と発表することで府民の支持を集めてきた。しかし、府庁内では部下の言うことを聞かない、独断専行という批判の声が多く、発言にも政策的、科学的な裏付けが乏しい。「イソジンでうがいするとコロナが死ぬ」とか、「大阪ワクチンを秋には作る」など、いま振り返れば「?」しか付かない珍説を繰り出し、それが批判されるとその後は沈黙して、イソジンも大阪ワクチンも、その後どうなったのか何も語っていない。発言の責任を取るのが政治家の務めだが、「タレント」の吉村氏は「その場でウケること」が優先されているように見える。
結果的にコロナ第4波を招いた吉村氏の功罪について『週刊ポスト』(4月16日発売号)が詳しく検証しているが、そこにも登場した元東京都知事で元厚労相の舛添要一氏に、改めて吉村流政治の問題点を聞いた。
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一言で言うと、吉村さんはテレビに出すぎです。私は厚労大臣だった時、絶対に特定の民放番組には出ませんでした。その番組を見てる人にしか伝わらないし、他局はわざわざ映像を借りたりはしないから、そこでの発言は必要な人にきちんと伝わりません。やるべきは記者会見です。私は何かあれば夜中でも記者を集めて会見するようにしていましたから、全局が報じて多くの国民に伝わりました。
これは大阪のワイドショーの体質にも問題があると思います。東京だと、一部の政治評論家みたいな「菅べったり」のコメンテーターもいますが、それはごく一部で、特に番組MCは特定の政治家や政党を持ち上げるような発言は控えます。これが大阪は違う。大阪維新の会は、橋下徹さんの時代から辛坊治郎さんとか宮根誠司さんなんかが露骨にヨイショしてきて、そのノリがずっと続いています。
いまは平時ではなく有事です。知事がお気に入りの民放番組をハシゴしている場合ではないでしょう。しかも、それで吉村さんの人気が出ると、国政の政治家もみんな真似し始めて、加藤勝信・官房長官や田村憲久・厚生大臣らが同じようにテレビに出まくる。総理大臣までが特定の民放番組でインタビューに応じています。