「冬季北京五輪」まであと1年を切ったが、本誌・週刊ポスト連載『逆説の日本史』の著者で作家の井沢元彦氏は、「日本、そして世界は断固ボイコットすべきだ」と主張する。同氏は13年前に北京で行われた夏季五輪の際もボイコットを主張したが、いま再び提言する理由とは?
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2008年夏に開催された北京五輪の時も、「ボイコットすべきだ」と主張しました。当時は日本のメディアからも奇人変人扱いされましたが、その考えは今も変わりません。“中国嫌い”などではなく、歴史家としての明確な根拠があります。
一般に“平和の祭典”とされる五輪ですが、中国による開催は世界平和には繋がらず、むしろ逆効果になる危険性がある。それは中国がまぎれもない「独裁国家」だからです。
中国は「自治区」と呼ばれる占領地で人種差別的な民族弾圧を続けています。“民族浄化”を目標に女性に避妊手術を受けさせたりもしました。現在はウイグル地区での強制労働などが問題になっていますが、前回の北京五輪の時はチベットへの弾圧が特にひどかった。そんな国に五輪をやらせて成功に終わったら、独裁政権が国民から一層支持される恐れがあります。
その“前例”として挙げられるのが、アドルフ・ヒトラー率いるドイツが開催した1936年のベルリン五輪。ヒトラーが五輪に全力を注いだ結果、ドイツは最も多くのメダル数を獲得、本格的な五輪記録映画を製作して高い評価を得るなど、ベルリン五輪は大成功に終わり独裁は強まりました。
逆に1980年のモスクワ五輪の時は、前年のソ連によるアフガニスタン侵攻に抗議する形で日本を含む世界各国が集団ボイコットをした。その後、一党独裁国家だったソ連は潰れました。
我々はこの歴史を教訓にしなければならない。ナチス・ドイツをのさばらせてしまった大失敗を繰り返さないためにも、日本政府、そして世界は北京五輪のボイコットに踏み切るべきだと考えます。
前回の北京五輪の時は20万人が虐殺されたスーダンの「ダルフール紛争」で中国だけが武器供与していた問題が大きかった。それ以外にも環境問題や世界中で被害が出た中国食品・製品の問題などボイコットする理由は十分にあった。