新型コロナウイルスは全世界で猛威を振るい、累計感染者数約1.4億人、同死者数約300万人を記録した。ワクチンが開発されるなど光明もあるが、日本では医療従事者や高齢者向けの優先接種が始まったばかり。大阪などを中心に感染の広がりを見せる変異型ウイルスの懸念も広がり、先行きは見えない。だからこそ、過去の世界的疫病から学ぶべきこともあるはずだ。
過去にまん延した世界的疫病の中には、いまだにワクチンや治療法が確立していない感染症もある。つつみ病理診断科クリニック院長で四日市看護医療大学特任教授の堤寛医師が語る。
「2002年に発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)、2012年以降に流行したMERS(中東呼吸器症候群)はインフルエンザではなく『コロナウイルス感染症』の一種です。そしてこの2つの疫病はどちらも現在まで治療薬が見つかっていません」
2002年11月に中国で発生したとされるSARSは、32の国や地域に拡大した後、2003年7月にWHO(世界保健機関)が収束宣言を出すまで感染が続いた。少なくとも8000人以上が感染し、774人が死亡したとされる。
収束から約1年程度は中国国内でいくつか感染例が報告されたが、その後は現在まで感染は確認されていない。
同じくコロナウイルスが原因のMERSがサウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)など中東地域で広く発生したのはSARS発生の約10年後、2012年9月からだった。
WHOの発表によると、今年1月までに報告された診断確定患者数は2566人で、少なくとも881人が死亡。患者が発生しているのは中東地域に限られるが、発生から9年後の現在も治療薬やワクチンがないため、中東地域では少数ながら感染が続いている。
1976年の発生以来、アフリカを中心に流行と収束を繰り返す「エボラ出血熱」。これまでに30回を超えるアウトブレイク(集団感染の突発的発生)が確認された。
最も大きな流行となったのは最初の発生から実に「38年後」となる2014年。ギニア、リベリア、シエラレオネなどで2万人以上が感染。約4割が死亡した。