JAXAは今秋、13年ぶりに新規宇宙飛行士の募集を行なう。合格者は2020年代後半に、日本人初となる月面でのミッションに参加することが期待されているという。一般にはあまり知られていない「宇宙飛行士選抜試験」とはどんな試験なのか。前回試験で最終選考にまで残った経験を持つ内山崇氏に聞いた。
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宇宙開発事業団(現JAXA)が初めて宇宙飛行士を募集した1983年以来、これまで日本では計5回の宇宙飛行士選抜試験が行われてきた。では、日本の宇宙飛行士は、どのような試験によって選抜されるのだろう。前回、最終選考まで残ったJAXAの職員で、その体験を著書『宇宙飛行士選抜試験』として上梓した内山崇さんは言う。
「当時の体験を本にして振り返るために、10年の時間が必要でした。私にとってはそれぐらい印象深く、過酷な試験でした」
第5期選抜試験には963人の応募があり、一次・二次の徹底した医学検査(2度目の精密検査は「人間ドックの3倍」)や筆記試験、面接試験などを経て、最終の第三次選抜が行われた。
なかでも日本の選考で特徴的なのは、その三次選抜で実施される「長期滞在適性検査」だ。同試験では最後まで残ったファイナリスト10名が、JAXA内の「居住モジュール」で1週間の共同生活を行う。1週間の生活の中で、一人で取り組むもの、班に分かれてのチーム戦、10人全員で行うものまで様々な課題が出され、受験者は心理状況や体調を24時間体制でモニターされる。
内山さんの際の課題では、決められた数の折り鶴を折る作業、マインドストーム(レゴブロック)での遊戯ロボットの制作などが出された。過去には「白いジグソーパズル」を組み立てる課題もあった。
「特殊な精神状態に置かれた受験者が、プレッシャーをかけられながら課題をこなしていくわけです。試験で何を評価しているかは明かされていませんが、どんな状況でも自分のパフォーマンスを乱高下させず、どれだけ安定して出せるかが見られていたように思います。非常に多角的に様々な条件を試せる試験環境だと感じました」