「同調圧力が強い」と言われる日本社会にあっても、新しい職場や学校に行けば、自分とは全く異なる考え方や振る舞い方をする他者と出会うことがある。著書『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』が話題の作家・演出家の鴻上尚史氏が、「多様化する社会」を生きるために必要な“作法”について語る。(取材・構成/岸川貴文)
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年度が替わって新しい集団の中に入っていく段階では、周囲からの同調圧力を感じやすいはず。コロナ禍で起きたさまざまなことを振り返っても、日本は世界でもっとも同調圧力が強い国と言えそうです。
日本で同調圧力が強いのは、文化的な理由があります。島国の農耕民族で、異民族・異言語の支配を受けなかったこと、村単位で年貢を納めてきたことなどです。
昔のようにNHK紅白歌合戦の視聴率が80%もあった時代は、何事も協調性を重視すればうまくいった。ところが、価値観が多様化し、テレビよりネットを見る人が増え、外国人労働者を含めて、多様化が問題となる時代になってきたのです。
多様性の社会を生きるのに一番重要なことは、「思っていること」と「口に出すこと」をイコールにしないということ。心の中では、ある人が嫌いだし認めていなくても、それをそのまま態度や言葉に表さないことが大事なのです。
内心としては差別感情は誰にもあります。僕にだって全くないとはいえない。けれど、差別感情を抱えていることと、それを言葉や態度に表すこととは大きく違うはずです。