政治家の「総理としての資質」を見抜くのは難しい。「平時」と「乱世」では求められる能力も違う。コロナ危機のさなかに就任した菅義偉・首相は官房長官時代に見せた「危機管理のプロ」の手腕と、非世襲議員だからこその庶民目線の政治を期待されたが、対応が後手後手でワクチン接種も主要国で最も遅れ、危機の出口を見いだせない。
首相の手腕に失望した国民は、「次の総理」に望みをつないでいる。自民党内も大型連休明けから「ポスト菅」をにらんだ動きが本格化する情勢だ。9月の自民党総裁選には、自薦他薦10人の候補の名前があがっている(表参照)。その中に国民の期待に応えられる政治家はいるのだろうか。
本誌・週刊ポストは、半世紀にわたりこの国の政治を取材し、歴代首相の成功と失敗を目の当たりにしてきた大ベテランの評論家とジャーナリスト5人に、総理候補たちを採点(1人10点満点)してもらった。
基準はそれぞれ違う。
元共同通信記者で佐藤栄作・元首相の退陣会見(1972年)など政治史の節目となる場面を取材してきた政治ジャーナリスト・野上忠興氏は、次の首相に求められる最も重要な資質をこう指摘する。
「難局を乗り切るために、官僚や政治家を動かし、国民の協力を得て総合力を発揮できる能力が必要です。菅首相には、それが決定的に欠けている」
元時事通信解説委員で、鈴木善幸内閣の第2次臨時行政調査会(土光臨調)の専門委員などを務めた政治評論家の屋山太郎氏の意見はこうだ。
「今の国際情勢は米中覇権競争にある。その世界観、大局観を持って国家運営にあたれるかが総理に求められる素養だ」
浦和市議や埼玉県議を経験した評論家の小沢遼子氏はこう言う。
「今の時代の総理に求められるのは、格差をなくし、国民が毎日の生活に困らない社会を維持していく。それを『この時代に政治家として何をすべきか』の軸に据えている人物だと思います」
さらに元時事通信政治部長の政治ジャーナリスト・泉宏氏と、田中角栄研究や指導者論で知られる政治評論家・小林吉弥氏が採点メンバーだ。