劇団四季の新作『劇団四季 The Bridge ~歌の架け橋~』の全国公演が4月16日に開幕した。コロナ禍で公演数が半減し、舞台芸術の存在意義さえ問われる状況の中、名実ともに“日本一”の劇団はコロナとどう向かい合ったのか。代表取締役の吉田智誉樹さんは、劇団を人の体に例える。
「創設者の浅利慶太の教えはまるで血液のように私たちの中に流れ、浅利を知らない新人という“新たな細胞”にも、それは受け継がれていくのだと思います」
『The Bridge』で初めてオリジナル作品の演出を務める荒木美保さんも、浅利さん亡きいまも、その信念はしっかりと受け継がれていると話す。
「そのうえで、自分たちなりの新たな作品づくりをしなければ、先人がつくり上げてきたものを本当の意味で守ることはできないと思っています。劇中で朗読する『ハングリー・キャッツ』の詩にあるように、“得たものをこわしながら築き、築きながらこわす。相変わらず、飢えている”ことが大切なのです」(荒木さん)
創立68年目を迎えた劇団四季の「これまで」を受け継いだ『The Bridge』は、未曽有の危機を乗り越え、劇団四季の「これから」に続く架け橋となっていく。同作に出演する笠松哲朗さんはいう。
「先輩たちが築いてくれたものは、確かにぼくたちの足掛かりになっています。同じように、ぼくたちの“いま”の積み重ねが、いずれ誰かの“これから”になるんだと思います。『The Bridge』には、アラジンやシンバといった役名がありません。出演者はみんな、ありのままの自分で、劇団四季の歴史を表現しなければいけないんです。
普段は『アラジン』や『ライオンキング』といった架空の物語の中に身を投じて生きているぼくたちは、お客さまの前で自分自身をさらけ出すことが、とても怖かった」(笠松さん)
それについて、荒木さんは、そうして恐れたり、悩んだりする一人ひとりの生きざまこそが、この作品のストーリーになっていくと話したという。