関ジャニ∞の横山裕が連続ドラマ初主演を務める『コタローは1人暮らし』(テレビ朝日系、毎週土曜23:30~)にチャンネルを合わせたら、目が離せなくなった。“1人暮らし5歳児”を演じる子役と関わる横山演じる主人公の空気感が自然すぎて、ドキュメンタリー?と一瞬錯覚してしまうほどなのだ。
ストーリーは5歳児のさとうコタロー(川原瑛都・7歳)が昭和レトロな風呂ナシアパートに引っ越してくるころから始まる。このアパートに住んでいるダメな大人たち…売れない漫画家・狩野進(横山)、ヒモ男と交際しているキャバ嬢・美月(山本舞香)、チンピラ風の中年男性(生瀬勝久)たちとのドタバタが描かれる。
そもそも、筆者がこの作品を知ったきっかけは、原作のコミック『コタローは1人暮らし』(津村マミ・著/小学館)を読んだことだ。連載が始まった2015年ごろから、子どもの貧困や児童虐待がニュースになることが増えた。この10年間、社会システム上の弱者である、女性や子どもの貧困や暴力被害を追い続けてきたので、タイトルを目にした時に、当時流行していた“虐待もの”かと思ったのだ。
読み始めたら全く違った。虐待のグロテスクな描写の作品も多い中、別切り口で子どもの“1人暮らし”を扱っていた。自炊できるほどの家事能力と、感情をコントロールできる精神力、新聞を読み理解する知性を身につけた5歳児が、大人のように自立して生活することで、周囲の人間に思わぬよい変化をもたらしていくハートフルなコメディだった。
大人は人間関係、仕事、お金、見栄、虚栄などに振り回されている。しかし、5歳児のコタローは、子どもだから社会の仕組みに取り込まれていない。物事の心理を突いた一言や解釈で、交わる大人の意識が変わっていく。
ドラマでも、先日放送された第1話では人とのつながりを作るところから描かれる。コタローが引っ越してきた時に、各家に引っ越し挨拶の箱ティシュを配ることでアパート内の人間関係が生まれる。それまでは、誰が住んでいるか互いに把握していなかったのに、交流が始まるのだ。
そして、何らかのケアが必要な人に手を差し伸べる素地が作られる。例えば、コタローと銭湯に行き、シャンプーを手伝う狩野。「自分、こんなことするキャラだったっけ?」という困惑を、横山が繊細な演技で表現しており、ドラマにリアリティをもたらしている。
コタローは純粋に誰かの役に立とうとする。美月が泣きながら夜を明かしたことに気付くと、「それにタオルか布を巻いて使うとよい。目を冷やすのだ。たくさん泣いたあとは早く冷やした方がよい」と冷たいペットボトルを差し出す。泣きたい思いを明かせる人も気づいてくれる人もいなかった美月に、コタローのさりげない優しさが染みる。
子役の川原瑛都の表情が抜群にかわいいうえに、その演技力には舌を巻く。3歳で連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(NHK)でデビュー。共演の生瀬も「これから絶対グングン出てくる俳優ですから、若いうちに芽をつんでおかないと(笑い)!」と、放送に先立って行われたリモート記者会見で絶賛し、大爆笑を誘った。
横山も「劇中でもコタローがいることで周りの大人が変化していくんですが、まさに僕ら自身も瑛都から影響を受けています」と語り、撮影現場でもコミュニケーション能力堪能で大人気のようだ。