今年2月でTBSを退社し、約5年間の女子アナ人生にピリオドを打った伊東楓(27)。女子アナのフリー転身は珍しくないが、彼女が選んだのは「絵本作家」というまったく新しい道だった。初の著書となる絵詩集『唯一の月』(光文社)を上梓した伊東が退社を決意したのは、日本で新型コロナの流行が始まった昨年3月頃だった。
「私は思い立ったらすぐ行動するタイプなので、『辞めよう』と決めたらすぐ社長に報告しました。『コロナ禍だから』と延期しようとは思いませんでしたし、もし先延ばしにしていたらモヤモヤした感情を抱えることになって辛かったと思います」
コロナ禍で思うように外出できない状況が、絵本作家として動き出した彼女にとってプラスになった面もあったという。
「ありがたいことに自分の本を出せることになり、その創作活動に取り組んでいたので、作品に没頭することができたんです。もちろん大好きな海外旅行に行けないなど辛いこともありましたが、書籍は自分の期待以上の仕上がりになりました」
キー局の女子アナといえば「倍率1万倍」ともいわれる憧れの職業。その競争を勝ち抜いて得た仕事を辞めることに抵抗はなかったのか。
「子供の頃からテレビで観る“才色兼備”な女子アナの姿に憧れていました。運良く入社することができましたが、私は台本通りに淀みなく伝えることが求められるアナウンサーという仕事に少し窮屈さを感じていたんです。入社して3年が経った頃には漠然と『いつかは辞めるだろうな』と思っていたので、後悔はありませんでした。
辞める報告をした時にある先輩から、『伊東は“器”にはなりきれなかったね』と言われました。アナウンサーという職業はタレントさんの溢れ出る“水”のような才能を受け止める“器”のような役割だという比喩ですが、その通りだなと。私は『自分の思いを発信したい』という気持ちが強すぎたのだと思います」