死や老いに対する恐れから「不老不死」に憧れを抱くのは人間の性だ。すべての権力を手中に収めた独裁者たちも例外ではなく、彼らが最後に求めたのも若さと“永遠の命”だった。
ルーマニアの独裁者、チャウシェスクは、妻エレナの要求で1952年に「国立加齢科学研究所」を設立。アンチエイジング治療の研究所は今も残り、世界中から多くの要人が訪れている。
北朝鮮の金日成も健康長寿に執着し、1976年に「金日成長寿研究所」を設立。10代の処女の血を輸血する“若返り療法”を受けていたとされる。
現代では、IT業界で巨万の富を築いた大富豪が不老不死の研究に投資している。グーグル創業者のラリー・ペイジやセルゲイ・ブリン、フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグ、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスらが100億円単位の資金を研究に投じている。近年になって老化のメカニズムが徐々に明らかになり、「不老不死ビジネス」が数兆円規模の巨大市場に育つと見込んでいるからだ。
現在、世界中で生体から有毒な老化細胞を排除する“セノリティック薬”の開発が盛んに行なわれている。このほかにも、世界では各国の主要大学が中心となり、さまざまな不老不死研究が行なわれている。
米・マサチューセッツ工科大学(MIT)では、細胞の新陳代謝を促す薬剤を入れたカプセル錠剤を開発。実験で延命効果が認められ、栄養補助剤として市販が始まっている。