売れ筋の「定番商品」をコンスタントに長く販売する手法は小売業界にとって大事な戦略といえるが、その比率ばかりに頼っていると足下をすくわれかねない。それは人気絶頂のアパレルチェーン「ワークマン」でも同じだ。ファッションジャーナリストの南充浩氏が、ワークマンの“死角”を敢えて指摘する。
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大量の衣料品の売れ残りが問題視されるようになって「定番商品を長期間売る」というやり方が改めて注目されるようになりました。この売り方を実践していると目されているのが急成長中の「ワークマン」です。
作業服チェーン店として拡大してきたワークマンは、ほとんどの品番が3~5年かけて売り尽くすことが知られています。これは(制服も含めた)作業服という分野ならではの消費サイクルで、一般的に「ユニフォーム」と呼ばれる製品は、何年間かモデルチェンジしません。
また利用者も短期間でのモデルチェンジを求めていません。なぜなら、趣味で着ている物ではなく仕事着だからです。もちろん、カッコよさがあればそのほうがベターですが、それよりも機能性や作業効率が重視されます。
気に入ったものであれば、むしろ買い替えや買い足しの際にモデルチェンジしていないほうがいいのです。制服についてもほぼ同様で、ややこしくなるので制服も頻繁なモデルチェンジは利用者から望まれません。せいぜい3~5年に一度で十分でしょう。
それゆえにワークマンは3~5年のモデルチェンジというサイクルで商品を販売することができていました。
売上高1000億円も視野に入ってきた
ワークマンの急成長の要因は、カジュアル使用を目的とした一般消費者の取り込みにも成功したことです。従来通りに作業員客の需要だけなら、ここまでの急成長は不可能だったでしょう。
ワークマンの2021年3月期第3四半期決算を見てみると、売上高831億200万円(対前年同期比16.1%増)、営業利益201億3200万円(同23.6%増)、経常利益212億7700万円(同21.4%増)、当期利益133億3600万円(同22.9%増)と、コロナ禍に見舞われながら大幅な増収増益を達成しました。
また、2021年3月期の見通しは、売上高990億700万円、営業利益218億4700万円、経常利益233億4300万円、当期利益155億3900万円と、こちらも増収増益となっており達成はほぼ間違いないでしょう。コロナ禍で苦戦を強いられるアパレルが多い中においては特筆すべき好業績です。
いよいよ売上高1000億円の突破が近づいており、2022年3月期では間違いなく突破できるでしょう。