駅でこんなサービスが利用できればよいのに、と思うものは色々とある。荷物を預けるコインロッカーや売店、ATMなどは従来から提供されてきたが、最近では、生活に欠かせなくなったスマホの充電スポット、急な雨降りでも安心の雨傘レンタルなど、新規のサービスが出現している。ここに、子連れ外出のハードルを下げるベビーカーのレンタルが加わった。ライターの小川裕夫氏が、鉄道事業者が取り組む子育て応援とサービスについてレポートする。
* * *
昨今、ベビーカーの大型化が目立っている。その背景には、2006年施行のバリアフリー新法がある。同法は市役所や公園、図書館をはじめとする公共施設、不特定多数が利用する交通機関などで誰もが快適に利用できることを目指したものだ。同法により、施設のバリアフリーが進められると同時にベビーカーのバリエーションが増え、大型化という新しい潮流を生んだ。
大型化したベビーカーは車体や車輪が大きく動きに安定感があり、子育て世帯にとって移動を楽にした。その一方で、ベビーカーという存在を際立たせることにもなった。
ベビーカーの存在感が高まるにつれ、それを邪魔に感じる側からは、そのユーザーを”ベビーカー様”と呼ぶなど揶揄も生まれている。ベビーカー利用者と非利用者双方は、なかなか歩み寄りが見られず、事態を打開する妙案も生まれていない。
そんな両者のハレーションがつづく中、内閣府が2021年1月に”公共交通機関の利用者の意識を探る”調査結果を発表した。同調査では、「電車やバスなどの車内やエレベーターで、原則としてベビーカーを折り畳まずに利用できる」ことに賛成と答えた人は55.6%、どちらかといえば賛成と答えた人が35.1%。ベビーカー利用者に好意的な回答が9割を超える結果が出ている。
社会全体に少しずつベビーカー利用への理解が浸透しているとはいえ、実際に子育てをしている父母の感じ方はまったく違うだろう。電車内にベビーカーを持ち込んだら罵声を浴びせられた、暴力を振るわれそうになったetc…嫌な経験をしているママは少なくない。そうした嫌な体験から、乳幼児を抱える母親は鉄道の利用を敬遠してしまいがちになる。
「乳幼児を抱えるママは、どうしても外出回数が少なくなりがちです。外出するにしても、家の近所の買い物ぐらいで、電車に乗って出かける機会はほとんどありません。その一因にはベビーカーが重い、オムツやミルクなど荷物が多くなるからといった理由があります。そうした状況を踏まえ、できるだけ荷物を減らす取り組みの一環としてベビーカーのレンタルサービスを始めました」と話すのは、JR東日本の担当者だ。