この夏、あなたは家族や友人と、こんな会話をすることになるかもしれない。
「どっちにする?」
「モデルナがいいから合同庁舎に行ってくるよ」
「モデルナなら近所で打ちなさいよ。ほら、この地図を見て。私はファイザーがいいから別々の場所ね」
アメリカやイギリスではすでに希望者全員へのコロナワクチン接種が始まっているが、日本ではまだ医療従事者への接種も終わっていない状況だ。これから、多くの国民が接種できる環境が整っていくわけだが、日本にも、「ファイザー」と「モデルナ」というアメリカの製薬メーカー2社のワクチンが相当数届いている。日本での供給が安定して接種会場が増えると、“ワクチンマップ”が登場するだろうと在米ジャーナリストは言う。
「アメリカのアリゾナ州やテキサス州は、接種場所やワクチンメーカー、その会場の残り本数が一目でわかる地図を公表しています。日本でも、公式か有志の人たちが情報を集める形でワクチンマップが作られ、自由に選べるようになるでしょう」
そのとき、あなたは「ファイザー」と「モデルナ」、どちらを選ぶだろうか。そもそも、2つのワクチンは何が違うのか。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが解説する。
「“ウイルスの断片(エピトープ)”を注射によって体内に入れ、免疫を獲得するのがワクチンです。2社のワクチンの構造はほぼ一緒ですが、その断片を採る場所が異なっています。その違いから、免疫反応の引き出し方が変わるのです」
このわずかな差によって、保管方法などのほか、副反応も異なる。いちばんの違いは、モデルナ製にだけ見られる「モデルナアーム」と呼ばれる症状だ。
「接種から5~9日後に、注射した部位に赤い発疹が生じる副反応です。モデルナ製接種者の95%に起きています。発疹は全身に生じることもありますが、3~4日で消失し、健康に害はないとされています」(国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さん)
時間の経過を待てない場合は、治療も可能だとボストン在住の内科医・大西睦子さんは言う。
「ハーバード大学医学部の医師は、ステロイド外用クリームや抗ヒスタミン剤などで治療できるとしています」