1970年代に世に出た2人の女性シンガーが、半世紀近くが経った今なお頂点に君臨し続けている。松任谷由実と中島みゆきほど長く続くライバル関係があるだろうか。
1975年、みゆきが歌手デビューし、『アザミ嬢のララバイ』『時代』という名曲を世に出したこの年、デビュー4年目の荒井由実は『あの日にかえりたい』と『ルージュの伝言』を発表、さらにバンバンに『「いちご白書」をもう一度』を書き下ろし、音楽業界を席巻した。
翌年、松任谷正隆と結婚して改姓したユーミンと独身を貫くみゆきは、都会育ちと地方出身、ニューミュージックとフォーク、陽と陰の音楽性も含めて何もかも対照的で、常に比較され続けた。1998年にはユーミンの『ノイエ・ムジーク』とみゆきの『大銀幕』というベストアルバムが同日発売。昨年12月にもお互いの新アルバムが1日違いで発売となり、同時にチャートインして貫禄を見せつけた。
取材や番組で2人を古くから知る音楽評論家の田家秀樹氏が語る。
「2人が世に出た1975年は女性の地位を見直す国際婦人年でした。当時の女性たちにとってみゆきさんは、“女はこうあらねばならぬ”という固定観念から解放されるための精神面での象徴となり、対してユーミンは、“女ももっと自由に楽しんでいいんだ”という生活面での象徴になった。女性たちはユーミンに憧れ、みゆきさんに癒やされていたんです。
そうしたことを『ラヴ・ソングス ユーミンとみゆきの愛のかたち』という本に書いたら、みゆきさんは『面白かった。一緒に何かできそうね』と言い、ユーミンは『面白かった。全然当たってないけど』と言ってきた(笑い)。2人の違いが感想にも表われています」
かつてラジオで対談した際には、ユーミンが「中島みゆきさんには絶対負けたくないと思っているんですよ」と冗談交じりに挑発し、みゆきが軽く受け流すといったやり取りもあったという。