医療崩壊に直面する大阪では、緊急事態宣言が延長され、いよいよ「夜の街」が我慢の限界に達している。飲食店が感染の場になることは事実だとしても、飲食店ばかりが厳しい規制を受け、一般企業ではリモートワークすら導入しないで普通に営業している状態は不公平だと見られても仕方ない。『週刊ポスト』(5月10日発売号)では、大阪の医療と経済の危機的状況をリポートしているが、特に「感染の元凶」とされた繁華街では、諦めと怒りと苦悩が渦巻いている。
北新地に3軒のバーを経営していた東司丘興一氏は、同地のクラブやバー、スナック、飲食店など約480軒を束ねる「北新地社交飲料協会」の理事長を務める。コロナ禍で経営する2店を閉じ、残る1軒でコーヒーを提供して営業を続けている。大切にしてきた店を失った東司丘氏は、意外にも「もっと厳しい規制が必要だ」と主張した。
「緊急事態宣言が延長されましたが、どう考えたって短すぎたんです。IOC会長が来日するからとか言われてましたが、まったく中途半端です。延長は必要ですが、そのかわりダラダラやるのではなく、どうせなら欧米のようなロックダウンをして、街に誰も出ないようにしてコロナをなくしてもらいたい。
酒だけが悪いというのは絶対におかしいです。酒ではなくてマナーの問題で、ツバ飛ばしながら話したりするからいかんのです。私たちのようなバーとか静かなクラブなんかは、換気も消毒も気をつけていますし、席の間隔も取っています。大きな声で話す客もほとんどおりません」
北新地では、最初の緊急事態宣言の時から、府の休業要請に従って感染防止に協力してきた。その成果が出ないまま1年間も無駄にしてしまったことに東司丘氏は憤る。
「去年の4月7日に最初の緊急事態宣言が出て、まさか1年以上もこんな状態が続くとは誰も思ってなかったです。当時は、大阪府から要請があるんやから守らなあかんと、北新地の仲間たちはほぼ100%、自粛要請に従いました。街には人影が見えないほどでした。
ところが、そこから今日まで、何回も締めては緩め、緩めては締めを繰り返しているうちに、“もういいかげんにせい!”という人たちも出てきました。補償もまともに出ず、こんなん我慢できへんということです。協力金が1日4万円出ても、広い店なんかやっていけません。クラブなどは壊滅状態です。すべての店をカバーする政策は難しいとは思いますが、その方法を考えるのが国なり府なりの仕事でしょう」