『デビルマン』『ハレンチ学園』『マジンガーZ』『キューティーハニー』など数々の代表作を持つ漫画界の巨匠・永井豪氏。その作品は、多くの映画監督やアーティストたちに影響を与えている。永井氏からの影響を公言しているのが、『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』などで知られる映画監督の園子温氏だ。永井氏と園氏が、6年ぶりとなる対談を行なった。
園子温:永井先生の作品の魅力は、昔から女性が強いところですよ。『ハレンチ学園』にしても『あばしり一家』にしても。今でこそハリウッドも、マーベルが『ワンダーウーマン』などを撮ってますけれども、ずっと前からテーマにされている。
永井豪:そうですね。僕の作品は最終的には女性が勝つし。
園:そう、悪者が女性に倒される。そこが優しいしセクシーだった。それって時代として早すぎたんですか。
永井:女性ヒーローものの走りは作ったと思いますよ。『あばしり一家』を少年チャンピオンで連載するとき(1969年)、僕が「女性を主人公にしたい」と言ったら、「少年誌で女性主人公は成功しません、名だたる大先生たちが失敗しました」と言われた。でも、僕は新人なのに、「僕は永井豪なので成功します」と言い返したんです(笑い)。
園:おおお!
永井:それで『あばしり一家』は人気が出たから文句がないだろうと、ヒロインの菊の助を大活躍させていった。その延長に『キューティーハニー』の誕生があるんです。
園:時代の先を行ってますね。
永井:「週刊ポスト」で新連載を始めた『柳生裸真剣(やぎゅうらしんけん)』でも、女性ヒーローを主人公にしました。(三代目将軍・徳川家光の剣術指南役だった)柳生十兵衛は女だった──という設定です。50年前に描いた『ハレンチ学園』のヒロイン・柳生みつ子のあだ名が「十兵衛」だったので、いつか本当に“女十兵衛”の作品を描こうと思い続けてきました。
園:では、構想50年ですか! 『ハレンチ学園』の遺伝子を継いだ新連載なんですね。
永井:半世紀越しに願いが叶いました。連載第一回目のカラーページは、コンピューター上で色を付けています(と、原稿を見せる)。
園:おお、すばらしい裸! これまた実写映画化が難しいやつだ(笑い)。映画監督なので、この漫画を実写にしたら……と想像するのが習い性ですが、先生の作品は破天荒で、ヌードが多くて……(笑い)。それにしても、この女性、ずいぶんとたくましいですね。