『きんぎょが にげた』『みんな うんち』など、数々のベストセラーを生み出してきた絵本作家の五味太郎さん。75歳のいまも精力的に創作活動を続けるエネルギーの源は何なのか。新型コロナの感染拡大で不安な日々を送る私たちが前向きに生きるヒントを得るべく、コロナ禍に生まれた絵本『会いたくて会いたくて』が「思わず泣いた!」「大切な人にプレゼントした」とベストセラーになっている女優・室井滋さんが話を聞いた。
室井:今日はお会いするのを楽しみにしていました。私は文しか描いていませんが、いくつか絵本を出しているので、絵本界の巨匠である五味さんにお会いできて光栄です。ちなみに、私の本業は女優なのをご存じですか?
五味:俺だって、それくらいは知ってますよ(笑い)。
室井:ありがとうございます。あっ、五味さん、素敵なメガネをしていらっしゃいますね。
五味:実は、今はメガネがなくてもラクなの。去年、白内障の手術をしたら、目がすごくよく見えるようになって、もう視界がキラキラよ。赤ちゃんってこういうふうに物を見ているんだなって思った。
室井:えー‼ 私は今のところ老眼はわずかで、細かい字も読めるんです。白内障の手術をしている人は身内にもいますけど、そこまで視界が変わるものなんですか?
五味:いつかわかるよ。いま室井さんが手にしてくれている『まだまだまだまだ』は、3月に出たばかりの絵本だけれど、手術をしたときはそれを描いていたの。だから創作途中で、急に視界が変わったんだよ。
室井:どういうこと?
五味:今思えばあまり差はないかもしれないけれど、最初の2ページぐらいは手術を受ける前に、そこから後ろのページは手術後に描いたもの。手術といっても1泊2日の簡単なもので、終わったら急に色がきれいに見えるようになった。それがすごくうれしくて、今思えばちょっと色を塗りすぎたなって気がする(笑い)。
室井:うわー、ホントだ! 途中からピンク色のビルが登場したりして、色が派手になってます(笑い)。
五味:目が快適になると、不思議と身体も疲れにくくなるし、楽しくなってくる。色もウキウキした感じになってくるんだよね。俺の場合、楽しく描ければいいというスタンスで、あまり考えずにやってるから。
室井:自由ですね。
五味:俺はフリースタイルで生きてるから……って(笑い)、今日はそんな話をするためにここに来たの?
室井:そうです(笑い)。五味さんのその自由な発想と創作意欲がどこからわいてくるのか、今日はおうかがいしたいと思っています。