都会に住むサラリーマンの住まいに対する需要の中身が変わりつつある。「もはや住まいの主な役割は仕事場になった」と指摘するのは、住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。同氏が、長引くコロナ禍で激変する住宅市場の今をレポートする。
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多くの人にとってこれまで住まいの役割は、主に「寝る」場所であった。特に都会に住むサラリーマンにとってはそういった傾向が強かった。
仕事を終えて自宅に帰り、食事をとって、テレビやネットや読書を楽しんだ後は寝る。家族と一緒に過ごす時間はあまり長くない。翌朝は起きると慌ただしく朝食を済ませて出勤。これが多くのサラリーマンの日常風景であった。
しかし、コロナがこういった当たり前の日常を変えてしまった。
自宅のリビングで仕事ができない人たち
まず、職場がテレワークに切り替わった人は、自宅が主な仕事場になった。
朝起きると朝食を済ませてパソコンを立ち上げる。そして日常業務のほとんどをパソコンでこなす。会議や打ち合わせや業務連絡もすべてパソコンで行う。場合によっては、一日中自宅で過ごすことも珍しくなくなった。
コロナ前は、自宅で過ごす時間の大半は睡眠に充てられていた。しかし、テレワークが始まると、自宅で過ごす時間の半分以上は「仕事」のために使われた。そうした生活に切り替わると、これまで気付かなかったことに気付き、見えていなかったものが見えてきたりもする。
例えば、自宅の中には仕事をするためにふさわしい場所がないことに気付いた人は多いだろう。小さな子どもがいる家庭では、リビングで仕事をすることもできない。特に昨年の4月と5月は、緊急事態宣言で学校も休校になったところが多かった。普段なら昼間は学校に行っているはずの子どもたちも、自宅で過ごしていたのだ。
同じ部屋の中に家族がいると、打ち合わせや会議に参加できない。ネット上で顧客に向き合うことなど、到底不可能である。