緊急事態宣言を受けて無観客で始まった大相撲5月場所(5月9日初日)。宣言は5月31日まで延長されたが、東京都ではイベント開催の制限が緩和されたため、4日目(5月12日)からは有観客(上限5000人)での開催となった。ネット上でまたも話題となったのが「溜席の妖精」だった。
今場所のチケット事情について、協会関係者はこう話す。
「4月27日までに15日分のチケットが販売されていたが、無観客開催となった初日~3日目のチケットは返金対応となり、他の開催日への振り替えは行なわれない。茶屋や協会関係者が販売している席はすでにチケットが購入者の手元に渡っているので、チケットと引き換えに返金されることになる」
NHKの大相撲中継の画面でも4日目からは観客の姿が戻ってきたことで、「溜席の妖精」も本場所に復帰した。昨年の11月場所から国技館に“皆勤”するようになった、背筋をピンと伸ばしたマスク美人だ。昨年の11月場所と今年の初場所は東の花道付近に15日間座っていたが、今年の3月場所からは向正面のほぼ中央の西花道寄りに定位置が変わり、中継でも常に映り込むようになった。
今場所は再び東の花道付近(テレビ画面の左上隅)に戻ったが、彼女の姿は今場所で見納めになるとも囁かれている。協会関係者が続ける。
「溜席で観戦できるのは観客の多くは、1場所(15日間)で23万円の『維持費』を支払っている協会の『維持員』になります。維持員たちは定期的に取組を観賞して力士の技量を把握し、その声が大相撲の発展につながっていくと位置づけられており、いわば協会が認めた“公式のタニマチ(支援者)”です。それだけに、目の肥えた好角家が多い。両国国技館で行なわれる東京場所は年に3回なので、維持員たちは年間69万円、これを6か年の一括払いとして414万円を支払っているのです」
ところがコロナ禍による入場者制限を受け、昨年7月場所や同9月場所では溜席は使用されない状態となった。その結果、維持員たちには溜席ではなく、その後ろの桝席を前列から割り振られるようになったという。
「その後、昨年11月場所から溜席の一部にも客を入れるようになった。ただ、間を空けて使用されるので、一部の維持員は枡席のまま。ところが、そうしたなかで協会関係者経由や一般のネット販売で購入した人が溜席に座っているという状況が生じたのです。『溜席の妖精』もそのひとりでした。高額の維持費を払っている維持員より前列に一般客が座る状態になり、とりわけ“土俵の監視役”を自負している古株の維持員からは、“土俵以上に目立ってしまう人がなぜあんないい席に座れるの?”といった声もあがっていた」(協会関係者)