今年4月に宇宙飛行士の星出彰彦氏を国際宇宙ステーションに運び、その後、同ステーションに滞在していた野口聡一氏を地球に無事帰還させたスペースXの宇宙船「クルードラゴン」。この宇宙開発企業の創業者であるイーロン・マスク氏(49)は天才経営者と称されるが、これまで破天荒な言動で物議を醸すことも度々あった。近著に『世界で最もSDGsに熱心な実業家 イーロン・マスクの未来地図』(宝島社)がある経営コンサルタントの竹内一正氏が、イーロン・マスクの“お騒がせ発言”からその真意に迫った。
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いまや世界長者番付でアマゾンのジェフベゾスと首位を争う資産家となったイーロン・マスク。彼の経歴を簡単に紹介しよう。
イーロンは南アフリカ共和国で生まれ。アメリカに渡りスタンフォード大学院を2日で辞めると「Zip2」、「X.com」とソフトウエア会社を次々と創業した。
次にペイパルの共同創業者になり、資産約1億8000万ドルを手にすると、これまでのシリコンバレー路線とはまったく違う宇宙ロケット業界に殴り込みをかけようとロケットベンチャー企業スペースXを立ち上げた。世界同時多発テロが起き、アメリカ人が自信と希望を失いかけた翌年の2002年のことだった。
大ボラ吹きか、人類の救世主か?
イーロンが目指すは火星。それも人類を100万人移住させて、文明を創るのが目標だ。
気候変動で環境悪化が進む地球に、100億人にも届こうかという人類が暮らし続けることは困難になる。ならば、他の惑星に移住すべきだと考えたわけだ。地球と人類を救うためにイーロン・マスクは走り出した。
しかし、そんな話を聞いて信じる人はいなかった。「あ~あ、また成金が大ボラを吹いている」。NASA(米航空宇宙局)も専門家たちも、イーロン・マスクとスペースXを相手にしなかった。
ところがスペースXは自分たちで開発したロケット「ファルコン9」で次々と奇跡を起こしていく。
民間初の国際宇宙ステーションへの人員輸送もその一つだし、打ち上げたロケットを地球に戻して垂直に着陸させ、その後、再び打ち上げる「ロケットの再利用」に世界で初めて成功してみせた。これは月面着陸をやったNASAでさえ出来なかった快挙だった。
当初はホラ吹きだと思われていたイーロン・マスクだったが、スペースXが短期間でロケット打ち上げ実績を積み上げていくと、世間の見方も大きく変わった。スペースXは本物だと高い評価を得るようになり、NASAが進める月面探査計画「アルテミス」にスペースXの巨大宇宙船「スターシップ」が選ばれた。
成果と比例するようにイーロンの発言は世界中から注目を集めていき、現在の彼のツイッターのフォロワー数はじつに5000万人を超えている。