ロシアの建設現場に派遣されていた北朝鮮労働者11人が3月、北朝鮮当局による賃金のピンハネや自由時間の少なさや食事の粗末さなどの待遇に不満を抱き、韓国に亡命していたことが明らかになった。北朝鮮労働者はロシア国内の朝鮮系住民の手配で韓国に逃れたとみられる。
北朝鮮政府は事態を重視し、労働者の監視体制を強化し、これまでは10人から30人のグループに監視役として国家保衛省要員1人を付けていたが、今後は5人のグループに2人の監視役を付けることに改めている。また、北朝鮮に残されている11人の亡命者の家族は全員、北朝鮮の辺境の山間部の施設に送られるなど、今後の脱北防止のための見せしめにされているという。米政府系報道機関「ボイス・オフ・アメリカ(VOA)」が報じた。
ロシアメディアによると、ロシアには約3万5000人の北朝鮮労働者が派遣されており、そのうちウラジオストクなどオホーツク海の沿海地方では約1万人が働いている。
今回亡命した11人は沿海部に派遣された労働者で、比較的監視が緩く、建設、伐採、農業など屋外での労働のため、北朝鮮の監視員の目も届きにくいことが、大量の亡命につながったようだ。
北朝鮮国内でも、これまでは1人や2人の逃亡はたびたび報告されていたものの、一度に11人が亡命したことについて、関係部署は大きな驚きをもって受け止められているという。ある関係者は「事件を耳にして、ひっくり返った。11人もが韓国に逃れたので、国もパニックになった」とVOAに語っているという。
このような大量亡命の背景には北朝鮮の出稼ぎ労働者への待遇の悪さがある。党への支払いは、業界や仕事の種類によって異なるが、毎年2月から10月までは収入の50%以上を上納しなければならない。それ以外の11月から翌年1月までの3か月間はほぼ自分の懐に入るが、この期間はロシアで極寒時期であり、仕事を見つけることができない。このため、監視員らの口利きで待遇の悪いところで働かざるを得ないという。