コロナウイルス感染拡大がおさまる気配を見せないなか、東京五輪の「中止」を求める声は日増しに高まる。実に59%の国民が開催中止を求めるという世論調査結果もある。
「開催」と「中止」の狭間で揺れ動くのが、本来なら自国の首都・東京を舞台にしのぎを削るはずのアスリートたちだ。強く開催を求めれば冷たい視線を浴びせられ、中止すべきとこぼせば、これまでの努力が無駄になる。政府やJOC(日本オリンピック委員会)、そして東京都も、言を左右に責任逃れと思しき発言を続ける。
開幕まで70日余となった5月10日、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長は「すべての人にとって安全な東京五輪を開催する」と断言した。果たして国民が五輪開催を歓迎する日はやってくるのだろうか。東京五輪の責任者たちの言葉を紹介しよう。
菅義偉(首相)
「選手や大会関係者の感染対策をしっかり行なっていく。そうして、国民の命と健康を守っていく」
5月7日、緊急事態宣言の延長を発表した会見で記者団の質問に、「現在の感染拡大防止に全力を投入していく」と答える一方、五輪開催実現に向けての決意は揺らいでいないことを強調した。
トーマス・バッハ(IOC会長)
「ワクチンの提供は東京大会をすべての参加者にとって安全で安心なものにし、日本との連帯を示すために、私たちが用意した手段のひとつだ」
5月6日、IOCは五輪出場選手など参加者へのワクチン接種に関して、米ファイザー社と独ビオンテック社からワクチン提供を受けると発表。バッハ会長は「率先して可能なかぎりワクチンを受けるようお願いしたい。ワクチンを接種することで、個人の健康だけでなく、地域社会との連帯や他者の健康への配慮という強力なメッセージを送ることができる」と呼びかけた。