試行錯誤した末の遅咲き人生は、人を逞しくし、魅力を引き出してくれる効果もある。
テレビ局のドラマスタッフが語る。
「吉田鋼太郎さん(62才)や吉田羊さん、遠藤憲一さん(59才)といった遅咲きの俳優は舞台を中心に活動してきた実力派が多い。江口のりこさん(41才)は、柄本明さん(72才)の劇団で活動中、かなり厳しく指導されていたといいます。滝藤賢一さん(44才)も、仲代達矢さん(88才)主宰の無名塾で指導を受け、仲代さんに掛けられた『きみは40才からが勝負だ』という言葉が支えだったそうです。
遅咲き俳優たちは、アイドル出身の俳優と違いテレビに出ると必ず爪跡を残す。期待以上の演技を見せてくれるので、制作サイドとしても頼りになりますし、安心感があるので、出演を希望するプロデューサーは多い」
昔より多彩なキャラクターが求められるようになったことも、晩成型の百花繚乱に影響していそうだ。「大器晩成」の大活躍を見せた女優の赤木春恵さん(享年94、2018年逝去)の長女であり、所属事務所「オフィスのいり」のデスクを務める野杁泉さんが言う。
「昔のドラマは絶対的な主人公がいたけど、世相とともに変わってきたと感じます。母は、『橋田(壽賀子)先生の“渡鬼”は絶対的な主役がいるのではなく、1話ごとに違う役にスポットが当たる群像劇になっている。そうした時代の流れに自分も入れてうれしい』と語っていました」
遅咲き時代への進化は、ただ社会の高齢化が進んだだけでなく、世間の価値観が多様化して幅広い生き方が認められるようになったことも影響しているのかもしれない。
超一流を目指さなくてもいい。まだまだ続く人生をあきらめなければ花は開く。
※女性セブン2021年5月20日・27日号