東京都、京都府、大阪府、兵庫県から始まった3回目の緊急事態宣言は、愛知県、福岡県へと広がり、北海道、岡山県、広島県へと適用地域を増やしていき、もう全国で発令してほしいという声も上がっている。ところが、この措置は期待通りの効果をあげられていない。一年前の緊急事態宣言時とは異なり、通勤ラッシュは消えず、闇営業は「闇」ではなくなり、様々な「3密」が各地で出現した。ライターの森鷹久氏が、三度目の緊急事態宣言下で起きた「3密」トラブルの変化についてレポートする。
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3回目の緊急事態宣言突入にあわせ、首都圏のJR線は「減便」や「終電時間の繰上げ」を実施した。こうした策を鉄道会社が打ち出すことで、人出を抑制する狙いがあったというが、朝の通勤時間帯には各線のターミナル駅などで混雑が発生。駅や電車内はコロナ禍以前のような「ラッシュ」状態になり、もはや政府や都の要請が国民にほとんど届いていないという実態が、白日の元に晒された格好となった。
この一件は、テレビのワイドショーでも積極的に取り上げられ、SNS上にはJRがとった対策を批判するコメントが相次いだ。だが、同じような経緯で大混雑に陥っていた場所は、他にも複数あった。
「自治体からの時短営業要請を無視して営業する店が増え出しました。まあ、闇営業ですよね。かつて闇営業の店はバッシングの対象でしたが、次第に闇営業店に人が集まりだし、かなり密状態になっていたんです。その繁盛ぶりを知った、それまで要請に従っていた他の店の経営者が、うちも開けよう、となったんです」
細井あかりさん(仮名・40代)が千葉県某市で経営する飲食店の周囲の店も、前述のような経緯を経て5月初旬から通常営業を再開。付近には同じような店が他にも4~5件あり、人出が戻ってきているという。
「飲食は黙って、お酒もダメ、家から出るな、それで補償もあってないようなもの。これまでは私たち飲食店が我慢していれば良かったが、お客さんの我慢も限界。私たちも限界。正直、お店にはすごい数のお客さんが来てくれて、都内からやってくる人もいる。密だなんだと言われますけどね、もう、要請なんて誰も聞かないですよ」(細井さん)
細井さん自身は、高齢で呼吸器系の基礎疾患がある家族がいるため、営業の再開には慎重な姿勢だが、この状態があと一ヶ月も続けば、やむを得ない選択をするしかないとため息を漏らす。一方で気がついたのは、緊急事態宣言も3度目となれば、もはや「緊急事態感」を感じている人など、ほとんどいないということ。1度目、2度目の緊急自体宣言下で営業を続けている店へのバッシングは、貼り紙を貼られたり、クレーマーが店にやってきたり「見える形」で出ていたし、ネット上でも大いに叩かれたのだが、3度目の今回はそれがほとんどない。
「やってる店を見つけたお客さんたちは『やったー』って感じで堂々と入っていかれます。以前はコソコソ入っていかれたんですが…」(細井さん)