ライフ

東京国立博物館【2】献納宝物を見た壇蜜「引き算の美」に感銘受ける

『鳳凰円文螺鈿唐櫃』。平安時代・12世紀 重要文化財。東京国立博物館蔵(法隆寺宝物館第4室にて7月18日まで展示)

『鳳凰円文螺鈿唐櫃』。平安時代・12世紀 重要文化財。東京国立博物館蔵(法隆寺宝物館第4室にて7月18日まで展示)

 美術史家で明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜。日本美術応援団の2人が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・台東区の東京国立博物館 法隆寺宝物館の第2回。2人が、日本金工の最高傑作と称される献納宝物を見て回る。

山下:法隆寺の献納宝物を収蔵する東京国立博物館の法隆寺宝物館でまず目を引くのが、建物です。ニューヨーク近代美術館(MoMA)など数多くの美術館建築に携わる谷口吉生さんが設計し、館内の展示空間は隅々にまで彼のセンスが行き届いています。

壇蜜:モダニズム建築の中で古代の息吹を感じられて贅沢です。階段の吹き抜けにある『灌頂幡(模造)』のスケールにも圧倒されてしまいます。

山下:代表的な献納宝物で日本金工の最高傑作とも称される、国宝『灌頂幡』のレプリカです。幡とは仏教の儀式に使う旗で、中でも豪華な灌頂幡は天皇が亡くなられて1年目の法要や寺院の完成を記念する儀式などに用いられました。

壇蜜:仏や天人、唐草などの透かし彫りが煌びやかに施されています。『鳳凰円文螺鈿唐櫃』もまた美しい。

山下:平安時代の唐櫃で夜光貝の螺鈿で鳳凰が描かれ、鳥の内側部分の漆には細かな金粉がまかれています。

壇蜜:螺鈿の技術はすでにあったのですね。びっしりと埋め尽くす螺鈿とは違い、そぎ落とされた上品さに宿る“引き算の美”が日本らしいです。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長。

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)。

●東京国立博物館 法隆寺宝物館
【開館時間】9時半~17時(最終入館は閉館30分前まで)※入館はオンラインによる事前予約(日時指定券)制
【休館日】月曜(祝日の場合ならびに2022年1月3日は開館し、翌平日が休館)、年末年始、その他臨時休館あり
【入館料】一般1000円
【住所】東京都台東区上野公園13-9 ※開館情報はHPにて要確認

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年5月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
ショーンK氏が千葉県君津市で講演会を開くという(かずさFM公式サイトより)
《ショーンKの現在を直撃》フード付きパーカー姿で向かった雑居ビルには「日焼けサロン」「占い」…本人は「私は愛する人間たちと幸せに生きているだけなんです」
NEWSポストセブン
気になる「継投策」(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督に浮上した“継投ベタ”問題 「守護神出身ゆえの焦り」「“炎の10連投”の成功体験」の弊害を指摘するOBも
週刊ポスト
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
3月末でNHKを退社し、フリーとなった中川安奈アナ(インスタグラムより)
《“元カレ写真並べる”が注目》元NHK中川安奈アナ、“送別会なし”に「NHK冷たい」の声も それでもNHKの判断が「賢明」と言えるテレビ業界のリスク事情
NEWSポストセブン
九谷焼の窯元「錦山窯」を訪ねられた佳子さま(2025年4月、石川県・小松市。撮影/JMPA)
佳子さまが被災地訪問で見せられた“紀子さま風スーツ”の着こなし 「襟なし×スカート」の淡色セットアップ 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン