テレビや雑誌などで見かける女性のアイドル、女優、モデルの多くは、細身のシルエットだ。多様性が認められる世の中に変化しつつあるなかでも、メディアでは細身のシルエットがもてはやされる。
現在、体形のバロメーターとされているのが、「体重÷(身長×身長)」で導き出されるBMIだ。一般的に、BMIが25以上は「肥満」、18.5~24が「普通体重」、18.5未満は「低体重(やせ)」のカテゴリーに入るとされている。
もともとは健康状態としての肥満度(メタボリックシンドロームか否か)を測るモノサシだったが、いま、多くの女性は、BMIの数値を細かく分類して“美しさ”の指標にしている。
とある痩身エステサロンが、本来やせ型の部類に入るBMI20前後を「美容体重」、やせすぎに分類される18前後を、“ガラスの靴が割れない”「シンデレラ体重」、さらにその下の17前後を「モデル体重」と呼び始め、10〜20代女性に浸透した。こうしたモノサシについて、Y’sサイエンスクリニック広尾統括院長の日比野佐和子さんが言う。
「BMIは身長と体重の数値から計算されるため、健康において重要な体脂肪率や筋肉量まではわかりません。筋肉は脂肪よりも重いため、引き締まった筋肉質の人の方が体脂肪の多い人よりもBMI値が高くなり、『肥満』と判断されることもある。BMIは、あくまでひとつの目安としてとらえるべきです」
BMI20前後の美容体重でも、筋肉がなく脂肪がたっぷりついた「かくれ肥満」ということもあるのだ。この体が美しくも、健康でもないことは想像に難くない。
しかし、そんなことを言われても、世の女性のやせることへの情熱はおさまらない。2012~2015年に東京都医学総合研究所などが行った調査では、10才女児の23%に「やせたい願望」があった。小学4、5年生すら「やせたい」と願う背景には何があるのか。日本摂食障害学会理事長でなんば・ながたメンタルクリニック院長の永田利彦さんが指摘する。
「現在は、先進国の多くで“やせていれば美しい”という“信仰”が広まり、人の目を気にする年頃から、やせるための行動を始めます。少しやせると友人などから“すごいね”“かわいくなったね”と言われ、“やせた私はすごい、魅力的だ”と強く感じるようになる。それは裏返せば“やせていない私はダメだ、魅力がない”という考えにつながります。そして、“魅力的な自分”を維持するために、無理なダイエットを続けることになるのです」