2010年代の若者世代をさして「さとり世代」と呼んだこともあったが、それは物欲がない、旅行へあまり出かけないなど経済活動の特徴をとらえたものだった。だが、社会の厳しさや生き抜く術を本当に悟っているのは、少子高齢化で日本社会のマイノリティとなってしまった2020年代の若者「ミレニアル世代」や「Z世代」なのではないか。俳人で著作家の日野百草氏が、派遣バイトで募金(および寄付勧誘)活動をしていた国立大卒の若者に、就職への決意を聞いた。
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「バイトでやってるだけです。本音はこっちが助けて欲しいくらいですけど」
元は高級飲食店のアルバイト社員だったというカメリエーレさん(20代・仮名)は駅前広場で世界的に有名な団体の寄付を呼びかけていた。筆者にも声をかけてきたが、どうも要領を得ない。しばらく眺め、彼の一団が解散したところで声を掛けると、失業保険給付明けしばらくの4月から派遣バイトでやっているだけだという。
「直接(雇用)のバイトもいるみたいですけど、よくわかりません。ただ人に役立つキャンペーンスタッフということでこの仕事を紹介されただけです。一応の説明は受けましたが、みんなよく知らない人たちです」
本旨ではないし実態は複雑な「闇」とも言える部分もあるので仕事内容については割愛するが、よく見かけるこの手の街頭募金、寄付勧誘はその世界的な団体や国際機関の職員がやっているわけではなく、アルバイトや派遣がやっているケースが多い(NPO職員やボランティアなど例外はある)。カメリエーレさんは昨年6月まで(本人談)都心のラグジュアリーホテルにも支店のあった高級飲食店でアルバイトをしていたが、コロナ禍の収益悪化により店舗撤退、退職となり、しばらくして登録したのがこの寄付の勧誘バイトだという。
「ほんとにその団体かも知りません。ただ声掛けしろと言われただけです。みなさん国連機関の人とか勘違いしますが、私はただの派遣バイトです」
もちろん、そうではあってもほとんどは正式な団体がやっている街頭募金、寄付の呼びかけだが真偽は難しい。国際的な組織を騙り詐欺を働く連中も摘発されている。また「募金だし小銭ならいいか」とついて行ったら月契約の寄付だったとか ―― だから筆者もおいそれと「ちゃんとした団体の勧誘である」とか、逆に「詐欺である」などと各地に展開する個々の寄付勧誘、募金行為に関して言い切ることも、正否を下すこともできない。それにしてもターミナル駅のどこに行ってもこの手の勧誘活動、目に見えて増えた。日本人も厳しいコロナ禍、異国の貧困話をされても困る人が大半だろうしチャリティーイベントもままならず、DMを送りつけても効果は薄い。こういった”業界”も苦戦しているのかもしれない。