ワクチン・パニックが止まらない。菅義偉・首相は新型コロナウイルスのワクチンについて「1日100万回接種」を掲げたが、予約の電話はつながらない、ネット予約もシステムエラーが相次ぐという状態で多くの高齢者が予約できないまま1回目の募集を締め切った自治体も多い。
名古屋市のように1か月以上先の「6月末」まで予約が埋まったケースもある。接種を受けたくても受けられない“ワクチン難民”と化した高齢者が全国にあふれているのだ。
その一方で、大富豪の経営者夫妻や市長、町長とその家族がこっそり優先接種に群がっていたことが次々に発覚した。
そうした“ワクチン上級国民”の行為に何らかの制約があるのか厚労省に訊ねると、「自治体や医療機関の判断にまかされています」(医薬・生活衛生局)との説明だった。
これは氷山の一角に過ぎない。いま、全国であの手この手の抜け道接種、予約の順番飛ばしが横行し、社会のワクチン格差を広げている。その手口はどのようなものか。
会社役員が“歯科助手”に
ワクチン接種は原則、「医療従事者」「高齢者(65歳以上)」「基礎疾患のある人(年齢不問)と介護施設のスタッフ」の順番で行なわれ、65歳未満の基礎疾患のない人は最後になる。
医療従事者への接種は今年2月に始まった。この「医療従事者枠」が抜け道として利用されている。都内クリニックに勤務する看護師Aさんが言う。
「医療従事者の接種は、病院から地元の医師会などを通じて対象の医療スタッフのリストを提出することになっていますが、そのリストに勤務する看護師や看護事務、看護助手以外の人を入れることは可能です。
院長が自分の家族や知人を事務スタッフとしてリストに入れたという話はよく聞きます。申請後、接種会場の医療機関から〇日に何人、×日に何人と接種日が指定されるので、職員と家族は別の日に接種させ、会場でバレないようにしている」
広告会社役員のBさん(48)は親しい歯科医師から、「ワクチンを打ってみないか。うちのクリニックは私と歯科助手の2人だけだから、スタッフ枠に紛れ込ませれば早く打てるよ」と言われ、優先接種させてもらうことにした。