小池が自民党政権を乗っ取る
女性政治家で唯一、自民党総裁選に出馬した経験を持つ小池氏には、安倍─菅政権に対する怨念がある。小池氏に近い自民党OB議員が明かす。
「第2次安倍政権の内閣改造の際、女性の目玉大臣を探していた安倍さんはかつて自分の内閣で防衛大臣を務めた小池さんの起用を考え、官邸で面接したことがある。しかし、菅さんが『あの女は石破茂を支持した』と強く反対したことから入閣は見送り、その後、小池さんは重要ポストから完全に干されてしまった。小池さんは安倍―菅体制が続く限り自分の総理の目はないと考えて都知事選への転出を決断した」
2017年の前回総選挙では、小池氏が反撃に出た。安倍氏が野党の選挙準備が整っていないうちに衆院解散に踏み切ると同時に、小池新党「希望の党」を旗揚げして野党の保守系議員を結集、「小池に負けるかもしれない」と安倍氏を慌てさせた。新党は途中で失速したが、「あの時、小池氏自身が出馬していれば、小池政権ができていた」(野党重鎮)とも言われた。
小池氏はまだ「総理の椅子」を諦めていない。
「小池氏は自らが戦略をつくるのは苦手だが、政治の流れに乗ることは得意としている。その流れを見極めているところでしょう。もう1つは、戦う時は仮想敵をつくる。それが安倍前首相になる」(前出・藤本氏)
その潮目が変わってきた。
解散・総選挙が五輪後の9月に行なわれれば、フリーハンドになる小池氏にはもう一度、小池新党で勝負するチャンスがめぐってくる。
次の総選挙で逆風の自民党は大きく議席を減らし、菅首相は敗戦の責任をとって総辞職に追い込まれる可能性が高い。小池氏の政敵の一人がまず失脚する。選挙後の総裁選に安倍氏が出馬した時こそが、小池氏にとって最後の勝負をかけるタイミングだ。自民党反主流派議員が指摘する。
「総選挙後は自民党内の勢力地図が大きく変わる。地盤が弱い魔の3回生をはじめ安倍チルドレンは軒並み落選し、安倍支持派の力が落ちる。その時点で小池新党が政界第3極の勢力を獲得し、自民党を過半数割れに追い込むことができていれば、二階氏や石破氏ら自民党の反安倍勢力と組んで安倍再々登板を阻止し、小池連立政権をつくる道筋が見えてくる」
3度目の安倍政権なんて私が許さない──彼女が動いたその時、「小池氏が自民党政権を乗っ取る日」になる。
※週刊ポスト2021年6月4日号